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2021年9月 5日号
訃報 世界的ブーム作った「数独」 名付け親の鍜治さんが死去
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「数独(SUDOKU)」の名付け親で、パズル制作会社「ニコリ」を設立した鍜治真起さんが8月10日、胆管がんのため死去した。69歳だった。

 打ち合わせで何度かニコリ本社を訪ねたことがある。社員が黙々とパズルを作成、点検する事務所で「あ、どうも〜」とポロシャツ姿の男性がひょこんと顔を出し、人なつっこい笑顔で挨拶(あいさつ)してくれた。後で聞いて鍜治社長(当時)と知った。飾らない人柄が印象的だった。

 鍜治さんは印刷会社で働いていた1980年代、偶然目にした米国の雑誌に載っていた「ナンバープレース」というパズルに夢中になり、友人と創刊した雑誌『パズル通信ニコリ』に掲載。正方形の枠内に1〜9の数字を重複しないように埋めていくパズル。「1回きり=シングル=独身」と連想し、「数字は独身に限る」と名付けた。その後、略称の「数独」が定着した。

 2004年に数独のファンだったニュージーランド人が自分で作成した数独をイギリスの新聞に持ち込んで「SUDOKU」の名で掲載されたことをきっかけに世界的大ブームを巻き起こした。

 手前みそになるが、日本で初めてクロスワードパズルを掲載したのは『サンデー毎日』である。1925(大正14)年3月のことだった。2015年3月、ニコリと『サンデー毎日』の共催で「日本語クロスワードパズル90年」というイベントを開催し、鍜治さんは集まったパズルファンの前で数独への思いを語ってくれた。

 東日本大震災で被災した岩手県大槌(おおつち)町の仮設住宅を訪ねた鍜治さんは、お年寄りから「問題が難しすぎる」と言われた。簡単な問題を持っていくとお年寄りはパズルを解くことができ、笑顔になった。このことがきっかけで『じぃじとばぁば ようこそ数独!』という高齢者向けのやさしい数独を発売するようになったという。

 無類の競馬好きでも知られ、晩年まで競馬を楽しんでいたという。ちなみにニコリはアイルランドの名馬の名前が由来。全力で駆け抜けた人生、おつかれさまでした。

(藤後野里子)

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