ヤマダホールディングス(HD)は12月2日、会員向け銀行サービス「ヤマダNEOBANK」が展開する積立預金サービスで、満期時に10%のポイントを還元するキャンペーンを撤回したと発表した。
このキャンペーンは11月28日にヤマダHD傘下のヤマダデンキが開始し、早期申込者を対象に通常還元の5%にさらに5%を上乗せした10%のポイント還元を行う予定だった。満期時の積立金額に対してポイントを付与する仕組みで、毎月定額を積み立てると「実質的な年利は約18%になる」とSNSで話題となり、応募が殺到した。
例えば、預金保険制度で保証される上限の1000万円を積み立てた場合、満期時に180万円相当のポイントが得られる計算となる。メガバンクの1年定期預金の金利が約0・125%であることを考えると、異例の高還元率であった。
だが、サービス開始翌日の11月29日にはサイトが閲覧不能となり、新規申し込みも中止された。そして12月3日午前、申し込みを行った利用者に対してヤマダデンキから「事前の想定・準備において弊社の見通しが甘かった」とするおわびのメールが送信された。
今回の問題について、メガバンク幹部は「ヤマダデンキの誤算は、預け入れ限度額を設定しなかったことに尽きる」と指摘する。長く続いた低金利の影響で、消費者は金利上昇に敏感になっており、高還元を掲げた金融商品に飛びついた形だ。
今回のキャンペーンは百貨店の「友の会」の仕組みを参考にしたともいわれる。「友の会」では年15%もの還元は珍しくないが、ヤマダの場合は元本が現金として残り、さらにポイントがヤマダの広範な商品に利用できる点が魅力的だった。
しかし、この10%還元キャンペーンは撤回され、申し込み済みの利用者に対しては謝罪として一口座につき3000㌽を付与するにとどまる。通常の5%還元も行わない方針だという。
朝令暮改に終わったキャンペーンの背景について、メガバンク幹部は、ヤマダデンキの焦りをこう指摘する。
「創業者で会長の山田昇氏は、楽天やアマゾンといったECモールとの競争に後れを取っている危機感を持っている。さらに、ライバルであるビックカメラの追い上げも急だ。今回の高還元キャンペーンは、こうした状況を打開するために考案された施策だったが、結果的に出はなをくじかれる形となった」
さらに、親密な取引先であった船井電機の破産もヤマダに影を落としている。FUNAIブランドのテレビの独占販売契約が切れ、在庫処分が課題となっている。
「ヤマダが船井電機のテレビなどのAV機器を独占販売することになった契機は、山田昇氏と船井の創業者である故船井哲良(てつろう)氏が親しい関係にあったことによる」(メガバンク幹部)
ヤマダHDの今回のキャンペーン撤回は、同社の信頼に影響を与える可能性が高い。現在の消費者動向や競争が激化する市場環境の中、ヤマダは顧客対応や信頼回復に向けた施策を急ぐ必要がある。
また、船井電機の破産による影響は依然大きく、FUNAIブランドのテレビ在庫処分をどう進めるかも重要なポイントだ。家電量販店のトップの座を維持するためには、従来の手法にとらわれない大胆な改革が必要だろう。
(森岡英樹)