来年用の年賀はがきの販売が11月1日、全国の郵便局で始まった。発行枚数は前年より25・7%少ない10億7000万枚。14年連続の減少で、減り幅は過去最大となる。「前年の1枚63円から85円に引き上げたことも年賀状離れを加速させている」(日本郵便関係者)という。
日本郵政グループの増田寛也社長は14日の決算会見(24年4~9月期)で「郵便料金の値上げで年賀はがきの当初の発行枚数は減らしたものの、収益は改善すると期待している」と述べたが、先行きは厳しい。
日本郵便の郵便・物流事業は、赤字が続いている。人件費や物流コストなどの費用の増加で同期の営業損益は947億円の赤字。赤字幅は前年に比べ439億円も拡大した。10月からの郵便料金の値上げで、「今年度1年間では10億円の黒字に転じる見通し」(増田社長)というが、電子メールやSNSの広がり、各種請求書のウェブ化の波に圧迫される構図に変わりはない。
日本郵便によると、国内の郵便数は2001年度の262億通をピークに、23年度には136億通まで減少している。
年賀状の減少は収益面の大きな痛手だ。郵便事業は1通あたり数十円で1軒1軒配達しなければならない。長年、年賀状以外は赤字の状態が続いている。
赤字の元凶は、人件費にある。日本郵便の営業費用のうち66・4%は人件費(22年度)が占める。郵便局の窓口営業費に限れば約75%が人件費だ。人件費にメスを入れなければ抜本的な改善は望めない。
こうした環境に、日本郵便も手をこまねいているわけではない。21年10月から土曜日配達を休止。昨年は宅配業界のライバルであったヤマトホールディングス(HD)と提携し、ヤマト運輸が引き受けたメール便や薄型荷物を郵便局に送り、日本郵便が郵便受けに投函して配達する仕組みを整えた。AI(人工知能)を活用した輸送も順次拡大する予定だ。
さらに日本郵便は、荷物の輸配送を委託する下請け約3000社の情報を一元的に把握する仕組みをつくる。トラック運転手の時間外労働が制限される「2024年問題」の影響が広がるなか、欠員を地域間で補充しやすくするのが狙いだ。下請け各社に発注する仕事量や契約料金も適正化し、赤字脱却に向け合理化を進める。
11月18日から全国の郵便局で貯(た)めて使える新しいポイントサービス「ゆうゆうポイント」の取り扱いも開始した。郵便局に訪れた際などにポイントが貯まり、当初はオリジナル商品などと交換できる。26年春には郵便サービスのポイント支払いにも対応する計画だ。
郵便物は郵便法でユニバーサルサービスに指定されており、全国一律の低額料金でくまなく配達することが義務付けられている。ユニバーサルサービスを維持しながら郵便事業を黒字化させるのは、まさに至難の業と言えるだろう。
(森岡英樹)
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◇もりおか・ひでき
1957年生まれ。経済ジャーナリスト。早稲田大卒業後、経済紙記者、米コンサルタント会社を経て、2004年に独立