食品スーパー「ロピア」を運営するOICグループは10月23日、パティシエの鎧塚俊彦氏が代表を務める洋菓子製造・販売会社「サンセリーテ」を買収したと発表した。鎧塚氏のノウハウを取り込み、ロピア店内で焼くパンやスイーツを開発するほか、洋菓子店「トシ・ヨロイヅカ」の海外展開とも連携する。
買収側の「ロピア」を経営するのは高木一族で、現社長の高木勇輔氏は女優でアナウンサーの加藤綾子さんの夫として知られる。「ロピア」は1971年4月に現会長で勇輔氏の実父である高木秀雄氏が創業。2011年に持ち株会社「ロピア・ホールディングス(現OICグループ)」に移行している。
経営を担う勇輔氏は、1981年生まれの43歳。慶應大経済学部卒業後、2005年4月に「菱食」(現三菱食品)へ入社し、営業企画部に配属されたが、翌06年11月に秀雄氏が社長を務めていた「ユータカラヤ(現ロピア)」に転じ、取締役に。13年3月に社長に就任した。
ロピアの躍進は勇輔氏の社長就任から始まった。テコとなったのは買収だ。社名の「ロピア」は「ロープライスのユートピア」に由来し、食品ディスカウントストアとして低価格路線で急速に店舗(現在104店)を増やし、増収推移を続けている。
「一般的なスーパーマーケットとの同質化競争を避け、〝100%売場主導〟という方針を掲げています。これは、各店舗の売場担当者が商品の仕入れから価格設定、売場作りまで、ほぼ全ての権限を持つ仕組み。地域や顧客のニーズに合わせたきめ細やかな商品展開で、他のスーパーマーケットとは一線を画す個性的な店舗づくりに成功している」(大手信用情報機関幹部)
19年にはイートピアを設立し、外食事業に参入。千葉県松戸市に割烹「黒泉」、東京・銀座に高級焼き肉店の「銀座山科」を開業した。20年には、東京・小石川にあるミシュラン一つ星の「小石川中勢以」も加わった。「和の鉄人」として有名な道場六三郎氏が創業した店舗の運営会社など、多くの企業を傘下に収めている。22年にはスーパーバリューの第三者割当増資を引き受け、子会社とした。
さらに23年には、〝日本一テレビに出るスーパー〟として知られる「アキダイ」を買収、今夏には人気ラーメン店を展開する「ソラノイロ」も買収した。そして今回は、鎧塚氏の洋菓子会社買収だ。買収後も、〝代表取締役シェフ〟として鎧塚氏の役割は変わらないというが、どのような効果を見込んでいるのか。
「ロピアはオリジナルのスイーツも販売しているが、フランス観光親善大使でもある鎧塚氏の監修を受けて、高いクオリティーのスイーツも販売出来るようになる。インバウンド需要の取り込みや海外展開でかなりプラスだ」(取引先メガバンク幹部)という。
OICグループは積極的なM&Aで、31年度には売上高2兆円を目指している。25年2月期のグループ全体売上高予想は前期比21・2%増の約5000億円。買収はまだ続きそうだ。
(森岡英樹)
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◇もりおか・ひでき
1957年生まれ。経済ジャーナリスト。早稲田大卒業後、経済紙記者、米コンサルタント会社を経て、2004年に独立