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2024年8月 4日号
東京ディズニー、クルーズ事業へ 女性CEOは事業拡大に意欲的
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首都圏の港を発着する周遊クルーズを計画している。24泊程度の短期航路が中心で、顧客単価は1航海あたり10万~30万円程度という。

 オリエンタルランドがクルーズ事業へ投資する金額は約3300億円。吉田謙次最高執行責任者(COO)は、「手元資金で賄うことも可能だが、テーマパーク事業にも継続投資を行うため、どこかのタイミングで資金調達を行うことを視野に入れている」と話す。就航数年後に年間売上高で約1000億円、20%程度の営業利益率を見込む。

 ディズニークルーズは米国で1998年に就航以来、現在5隻を運航。船上でミッキーマウスのショーなどディズニーが展開するコンテンツを楽しむことができると人気だ。アジア発着のディズニークルーズ船は、25年度にシンガポールで就航予定の船に続き、今回が2船目となる。

 クルーズ事業への進出を決めたのは、昨年6月に会長兼CEOに昇格した髙野由美子氏だ。ミリアルリゾートホテルズの運営に長年携わり、ホテル事業に知見がある。「〝海のホテル〟とも言えるクルーズ事業に成長性があり、これまでのテーマパークやホテル事業で培ったノウハウを生かせると踏んだのだろう」(取引先メガバンク幹部)

 髙野氏は宮崎県出身。80年に上智大文学部を卒業し、オリエンタルランドに入社。21年に同社取締役副社長執行役員に就いた。これまでに経営戦略本部長として経営計画の策定にあたったほか、ミリアルリゾートホテルズの要職を20年間歴任し、ホテル事業をオリエンタルランドグループの第2の柱となるまでに成長させた。

 髙野氏の事業意欲は旺盛だ。構想段階から参画し、総額3200億円を投下する東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」を6月にオープン。年間入園者数も243月期でディズニーランド・シーの両パークを合わせると2750万人を超えた。

 一方、課題も残る。「国内のゲストの約90%が、過去に1回以上来園しているリピーターで、ロイヤルティーの高い顧客層に支えられている」(大手信用情報機関幹部)。このため、既存アトラクションのリニューアルや新規アトラクションの開発は、継続し続けなければならない。

 また、インバウンド需要の盛り上がりはあるものの、国内の人口減少が止まらない中、入園者を計画通り確保し、収益を安定させることは容易ではない。オリエンタルランドは、平日・休日・時期などの繁閑差に応じて、価格が変動するチケットを提供する「ダイナミックプライシング」を導入。23101日からは変動価格帯の幅を改定し、入園料は最大1万円を超える。

 オリエンタルランドは253月期の入園者数を2900万人、連結売上高を前期比1107%の6847億円、連結営業利益1700億円を目標としている。髙野氏の今後の手腕が問われる。

(森岡英樹)

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