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2024年7月 7日号
北越コーポレーション株主総会 「社長解任」提案、攻防戦の行方
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経済 北越コーポレーション株主総会 「社長解任」提案、攻防戦の行方

 製紙大手「北越コーポレーション」が627日に開催する株主総会が波乱の予感だ。アクティビスト(物言う株主)として知られる香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」が、岸本晢夫(せきお)社長の解任を求める株主提案を行い、経営陣と真っ向から対立している。さらに、北越株の約20%を保有する筆頭株主である大王海運も、オアシスと歩調を合わせて岸本氏の解任を要求しているのだ。

「両者の株数を合わせれば4割近くとなり、他の株主も同調すれば解任が決議される可能性も捨てきれない」と市場関係者。オアシスは岸本氏が社長を務める16年間、北越の経営が低迷していることを問題視している。売上高や利益率の低迷、資産効率の悪化などを指摘し、新たな経営陣のもとで改革を推進する必要があると主張しているのだ。

 だが、オアシスの真の狙いは別のようだ。「北越を再編に巻き込み、保有する北越株を高値で売り抜けたいのだろう。念頭にあるのは、大王製紙グループによる北越買収ではないか」(市場関係者)。ただ、北越は大王製紙株の約25%を保有する筆頭株主であり、逆に北越が大王製紙を買収する可能性すらある。

 北越と大王製紙の資本関係には、過去から因縁がある。大王製紙の経営権を巡る親族間の対立が表面化し、カジノ事件と呼ばれる不正資金流用事件もあった。

「北越の岸本社長と大王創業家の井川高雄氏は盟友関係にあった。2006年に王子製紙が北越買収(TOB)に動いた時に、高雄氏が北越株の防戦買いで助けた」(北越関係者)とされる。高雄氏は、カジノ事件で知られる井川意高(もとたか)氏の実父だ。

 意高氏は社長兼会長であった2011年、106億円を超す資金を不正に引き出し、海外カジノに流用して大王製紙に損害を与えたとして、特別背任容疑で告発され、逮捕・収監された。

 この告発について関係者は「告発を陰で主導したのは叔父の井川俊高氏だ」という。俊高氏は大王製紙グループ企業の「大王海運」の特別顧問だ。

 その大王海運の俊高氏は、北越の岸本氏が昨年末に有事型買収防衛策を導入したのに立腹して、「自己保身を図っている」「岸本氏による独裁体制」と痛烈に批判した。しかし、これは昨年後半から大王海運が北越株の買い増しに動き、保有株比率が20%近くにまで上昇したことに対する岸本氏の防衛策だった。大王海運に北越がのみ込まれかねないとの危機感からだ。

 オアシスの岸本解任要求の背景には、岸本氏と井川俊高氏、そして俊高氏と意高氏の確執があり、再編に乗じて巨利を上げようと目論(もくろ)むオアシスの狙いが隠されている。昨年の北越の株主総会では、オアシスの株主提案は過半数に達せず否決されたが、岸本社長の再任の賛成票の比率は前回から約15ポイント低い約65%にとどまった。今年はどうなるのか。関係者の思惑は錯綜(さくそう)している。

(森岡英樹)

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