日経平均株価が2月22日、史上最高値を34年ぶりに更新した。同日の終値は前日比2・2%高の3万9098円68銭で引け、バブル経済絶頂の1989年12月29日に付けた最高値(3万8915円87銭)を上回った。その後も株価は続伸しており、4万円台も視野に入っている。デフレ経済からの脱却や上場企業のコーポレートガバナンス(企業統治)改革に対する期待などから、海外投資家を中心とした日本株への資金流入が続いている。
証券会社幹部など経済界からは「失われたデフレの30年」を取り戻す、歴史的な転換点と評価する声が絶えないが、この株価史上最高値更新を警戒する著名な投資家がいる。「長期投資の神様」と呼ばれる澤上篤人(あつと)氏(さわかみ投信創業者)だ。
澤上氏が株価史上最高値更新にぶつけるように出版した『暴落ドミノ 今すぐ資産はこう守れ!』(明日香出版社)の内容は強烈だ。要約すると「今はバブル相場の最終局面で、暴落が始まる前に売れるものは売っておこう」「次のひどい下げでは、中央銀行も政府も救済に動けない」といった内容。新NISAも「まだ手を出してはいけない」と警告している。
澤上氏が公開している「澤上篤人の長期投資家日記」には、株価が爆騰した2月13日付で、「凄い上げっぷり! ありがとう売りだ!」と題して「投資家や市場関係者の間では、『34年ぶりの高値だ、それ行け!』で、やたら気合いが入っていることだろう。一方、われわれ本格派の長期投資家からすると、『ありがとう』といって、どんどん売り上がっていく。もう既に、売れるものは売ってしまっている(中略)これだけ株価上昇の勢いがついて、上げピッチが軽くなってくると、なにかの加減で一転して棒下げとなるもの。その前に、できるだけ現金ポジションを高めておきたい」と記している。
また、2月14日付の日記では、「資金運用で、新NISAはないよ」と題して、「世界の金融マーケットでの価格形成は、すこぶる単純で薄っぺらなものになってしまう。単純で薄っぺら? そう、ゼロ金利や空前の資金供給によるカネ余りで買い上がるばかりできた金融マーケットだ。まともな投資判断というものが、機関投資家の巨大な資金運用マネーに蹂躙されてしまっての価格動向だ。そんなマーケットべったりの価格動向に向かって、新NISAによる投資が進められているわけだ。まさに、くわばらくわばらである。(中略)新NISAの制度を活用するのは、一度マーケットが大きく崩れた後からでいい」と記す。
澤上氏が指摘するように、今回の株価爆騰のけん引役は海外投資家の買いで、1月月間の日本株現物の買越額は2兆693億円と昨年5月以来の高水準に達した。東証が2月16日に発表した投資部門別売買状況によると、2月第1週(5〜9日)の海外勢の買越額は3664億円で、買い越しは6週連続となっている。
一方、日本の個人投資家は1月に9370億円を売り越した。貯蓄から投資への流れを加速させるため、1月からNISAが拡充されたものの、最高値更新が迫った中で利益確定売りが膨らんだ格好だ。正に「くわばらくわばら」の株価史上最高値更新だ。
(森岡英樹)