岸田文雄首相が「永久国債」に言及した。10月13日の参院本会議で「安定財源の確保あるいは財政の信認確保の観点から慎重に検討する必要がある」と述べた。それに先立つ代表質問で、国民民主党の大塚耕平代表代行が「(同党は)日銀保有国債の一部永久国債化を提言しています」と語ったことに対する答弁だ。
永久国債は償還期限を定めずに売り出す国債のことだ。英債務管理庁のウェブサイトによれば、同国政府は2015年、全ての永久国債を償還した。その時、償還した最も古いものは、1853年に発行した年2・5%の利子が得られるタイプだった。英政府は今まで利払いを遅延したことがなく、投資家は元本の償還をいつ受けられるか分からないものの、安定収入が期待できる。
一方、発行体の政府にとっては返済を気にせずに資金調達ができる。国民民主党の「日銀保有国債の一部永久国債化」とは、日銀が保有している国債の一部について償還期限をなくすという案のようだ。
同党の玉木雄一郎代表は昨年4月、衆院予算委員会で「超長期の100年国債、事実上の永久国債を発行して、100兆円ぐらいの資金を調達」する案を披露した。コロナ禍に対応する「大胆な財政出動」の財源にすべきという。日本国債の償還期間が最も長いタイプは40年だが、数年前から100年債を発行する国が増えている。
永久国債の問題はインフレが進めば元本や利子の価値が実質的に低下すること、発行すれば財政再建の姿勢が後退したと受け止められやすいことだ。とはいえ、今の日本でインフレが急速に進むとは考えにくく、各政党は財政再建を棚上げにした。ついに首相が永久国債に言及し、議論が活発になるかもしれない。
(森岡英樹)