「何も変わらない人事。三菱電機の内向きの企業体質を象徴しています」
厳しく断じるのは、あるメガバンクの幹部。三菱電機が7月28日に公表した社長交代人事を批判したのだ。その人事は杉山武史社長(64)が鉄道車両用空調装置の不正検査などの責任を取って辞任し、漆間(うるま)啓専務(62)が社長に昇格するというもの。
三菱電機では退任を控えた社長が後任者を推薦することが慣例だった。今回は社外取締役が中心の指名委員会が人選したという。だが、漆間氏は杉山氏の下で経営企画などを担当したいわば側近だ。
「杉山氏が後継指名した今の人事と変わらないように見えます。指名委員会のあり方が問われかねません」(前出のメガバンク幹部)
杉山氏は特別顧問として残る。同氏の前任者で、社長在任中に不正検査が続いていた柵山正樹会長(69)は留任した。
社長交代につながった不正検査の全容解明はこれからだ。空調装置に関しては1985年ごろから、鉄道車両のブレーキなど空気圧縮機に関しても15年前から続いていた。
三菱電機は社長交代人事を発表した直後の8月2日、新たな不正を明らかにした。業務用空調装置などを出荷する際、法令義務がある検査に不備があったという。17日には、受配電システム製作所(香川県丸亀市)で製造した配電盤の検査にも不正があったと追加で発表している。
外部の弁護士と大学教授が中心の調査委員会がこれから調査を本格化し、9月をめどに調査結果や再発防止策を発表する予定だ。漆間氏は社長就任時の記者会見でこう語った。
「過去に不適切行為が発見されてから何度も調査していたが、今回の不正検査問題を見つけられなかった。ものが言えないところがあるのではないかと思う」
企業風土の刷新は容易ではない。(森岡英樹)