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2021年5月 2日号
金融 投資ファンドによる買収提案と辞任した東芝・車谷社長の関係
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 東芝の車谷暢昭(のぶあき)社長兼最高経営責任者(CEO、63)が4月14日、辞任した。関係者が内幕をこう明かす。

「4月初めのことです。取締役会議長や指名委員会委員長を務める永山治・中外製薬特別顧問名誉会長(73)が車谷社長に詰め寄ったんです。『このままでは6月の株主総会は乗り切れそうにない』として、代表権を返上して会長か特別顧問に退くよう進言しました」

 3月18日の臨時株主総会で、東芝が反対するアクティビスト(物言う株主)の議案が通った。同月29日には別のアクティビストが東芝株を取得、物言う株主の保有比率は3割超になった。苦しい先行きを憂慮した永山氏が車谷氏に引導を渡したわけだ。すると、「車谷氏が持ち出したのが、例のCVCによる買収提案だったんです」(前出の関係者)

 CVCとは、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズのこと。CVCは4月6日、東芝に買収を提案した。買収価格は1株当たり約5000円で、7月にも公開買い付けを始め、10月にも上場廃止するという報道もある。それが明るみに出る前、車谷氏が口にしていたというのだ。

 実はCVCは車谷氏の古巣だ。2017年、三井住友銀行副頭取を辞して就いたのがCVC日本法人の会長。車谷氏は翌年、東芝CEOに転じた。前出の関係者が言う。

「車谷氏をCVCに招聘(しょうへい)したのはCVC日本法人の藤森義明最高顧問。藤森氏は19年、東芝の社外取締役に就いています。今回のCVCによる買収提案は車谷氏と藤森氏の連係プレーではないか」

 そうだとすると、東芝と車谷氏の利益相反が問われる可能性がある。現にCVCの提案を検討する社内チームは、利益相反の嫌疑がかからないようにするため、車谷氏に途中報告せず、取締役会に報告する方針だった。

 永山氏は4月9日、「(買収提案の)検討には相応の時間を要し、複雑性を伴う」という声明を発表。先行きは混沌としてきた。

(森岡英樹)

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