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2021年2月 7日号
2030年 ガソリン車の終焉とニッポンの未来
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「2035年までに新車販売で電動車100%を実現いたします」。菅義偉首相は1月18日の施政方針演説で、ガソリン車の新車販売を禁止する年を初めて明言した。ガソリン車が売れなくなれば、自動車、メーカー、ガソリンスタンドはどう変わるのか。

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 菅氏が語った「電動車」とはモーターで動くハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)をはじめとする低公害車のことだ。つまり、モーターを搭載せず、エンジンだけのクルマは今後14年以内に新車販売できなくなる。

 東京都の小池百合子知事は昨年12月、菅氏よりさらに早い目標を定めた。小池氏の都議会での発言によれば、乗用車は30年まで、二輪車は35年までに「(新車販売を)100%非ガソリン化する」。人口や経済規模が突出する東京都の方針は事実上、日本の目標となるだろう。わずか9年後にガソリン車の新車は姿を消すことになるのだ。

 具体的に何が起きるのか。自動車評論家の岡崎五朗氏に聞いた。

「政府と都の目標は、エンジンだけを搭載した新車の販売禁止。エンジンとモーターがあるHVは禁止対象にはなりません。目標年の後、新車販売の主流はHVになると思います。EVの普及も加速するでしょうが、30年には新車販売の1割程度にとどまると見ています」

 クルマのタイプを示す用語がでてきたところで、下の表をご覧いただきたい。クルマを動かす燃料と動力装置の違いで分類すると、6タイプに分かれる。そのうちガソリン車とディーゼル車を除く4タイプが低公害車だ。今は従来型のクルマが新車販売の6割を占めるが、9年後には少なくとも東京都ではゼロになる。岡崎氏の見通しでは、HVは現在の4割から9割に跳ね上がるというのだ。

 HVはトヨタ自動車が1997年、「プリウス」を世界で初めて量産した。その後、他のメーカーも販売するようになり、大衆車から高級車まで、セダン、ミニバン、スポーツ用多目的車(SUV)にも広がった。しかし、岡崎氏はHVの先行きに懸念を指摘する。

「HVには二つの方式があります。モーターだけで走行できる〝ストロングハイブリッド〟、それにモーターだけでは走行できず、補助的な役割を果たす〝マイルドハイブリッド〟です。政府や都が新車販売を禁止する対象に〝ストロング〟が入らないことは確実です。しかし、〝マイルド〟はどうなるのか明らかになっていません。もし販売禁止になれば、〝マイルド〟を採用している軽自動車は窮地に立たされるでしょう」

 軽自動車の場合、〝マイルド〟方式の販売価格は、ガソリンエンジン車に比べて1台当たり5万円ほど高い。もし〝マイルド〟の販売が禁止になり、メーカーが〝ストロング〟方式に変更した場合、車両価格は同20〜30万円程度も高くなるという。それでいて燃費はさほど向上しない。〝マイルド〟が禁止になれば、自動車販売市場で軽自動車の存在はかなり薄くなりそうだ。

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