牧太郎の青い空白い雲/1022
4月1日の入社式。そのさなかに(東京・大手町では)震度3の地震。栃木県では「震度5弱」だった所もあったらしい。入社式に参加していた知人は思わず立ち上がった。役員も、新入社員も慌てて......会場は総立ち。
「ところが新入社員の中で、一人だけまったく動かない奴(やつ)がいるんだ。よく見ると、入社式なのに居眠りしていたんだな。こんな大物、初めてだ」と知人はちょっぴり嬉(うれ)しそうに話す。
「ワザと居眠りのフリをしたんじゃないの? ワセダだろう? 俺たちの後輩には変わり者が多いから」と笑ったが......。笑ってはいられない。実は......このところ僕は「本物の居眠り」の常習犯なのだ。昼下がり、テレビを見ながら......。気がつくと番組が変わっている。歳(とし)をとるとそうなるのか? いやいや、身体(からだ)に異変が起こったのか? 不安になった。
博学の母親は確か「江戸時代はみんな居眠りをしていたもんだ」と言っていた。江戸っ子は早寝早起き。午後7~8時に寝て、午前4~5時に起きる。「夜ふかし」をすると、昼間に居眠りをする。でも僕は「夜ふかし」なんてしていない。気になって、本棚に放置していた家庭医学本を読むと【13〜15時の居眠りは生体リズムによる眠気で、10〜20分程度の仮眠が有効とされている】とある。
心身の機能を調節するための「居眠り」? ホッとした(慢性的なものには睡眠時無呼吸症候群や過眠症のサインである可能性もあるらしいけど)。「居眠り」は健康に良いのだ。
それなのに世の中「居眠り」に味方する人はいない。教師に怒られたり......国会で居眠りをすると、まるで「犯罪」のように批判される。それどころか、朝鮮民主主義人民共和国の最高人民会議で居眠りをすると、「反逆罪」で死刑になる「決まり」さえあるらしい。事実、人民武力部長を務めた人が軍訓練幹部大会で居眠りしたため、平壌の射撃場で高射機関銃で銃殺された。「居眠り」も命懸けだ。
そういえば、ちょっと前まで総理大臣だった石破茂さんも2024年11月の特別国会で居眠りをしてしまい、官房長官が「風邪気味で風邪薬を服用していた」と言い訳をしていた。
でも......「居眠り」ぐらい、許そうや!
今の国会、正直言って緊張感ゼロ。形式的な審議に全員が出席して黙って座っている。後輩の政治記者の面々も眠りたい気分?
はっきり言って「どうでもいい話」を無理やり聞かされるのは身体に悪い。議員さん! 正直に「居眠りしました。まったく意味のない審議だから」と言えばいい。
少なくとも「居眠り」でクビになることはない。「1日3時間睡眠」で有名なナポレオンも毎日、居眠りしていたんだから(笑)。
◇まき・たろう
1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある