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2025年2月 9日号
中居正広問題のフジテレビ 改革迫る投資ファンドの攻勢
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 フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジHD)の株式を7%以上保有するアメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が、フジテレビを傘下に持つフジHDに対し、女性トラブルが報じられたタレントの中居正広を巡る対応について「企業統治に深刻な欠陥がある」と厳しく指摘。外部の専門家による第三者委員会の設置を求める書簡を送った。

 ダルトンは114日に公表された書簡で、「中居正広氏を巡る騒動に関連する一連の出来事は、エンタメ業界の問題だけでなく、『フジ』の企業統治に深刻な欠陥があることを露呈している」と指摘。その上で「この問題への対応が遅れたり、曖昧になったりした場合、視聴率の低下やスポンサー離れにつながり、株主価値がさらに損なわれる可能性がある」と訴えた。フジHDが経営陣としての責任を問われる事態になる可能性もある。

 ダルトンは1999年設立の老舗アクティビスト(物言う株主)で、日本株への投資を積極的に展開してきた。創設者のジェームズ・バノー・ローゼンワルド3世氏ら3人が手掛ける投資戦略は、バリュー株投資や経営難企業への再建投資など多岐にわたる。2004年には帝国臓器製薬(現あすか製薬ホールディングス)に対するマネジメント・バイアウト(MBO、経営者による自社の買収)の提案や、07年のフジテックへのMEBO(経営者と雇用者による自社の買収)提案など、過去には攻撃的な手法も取っていた。しかし、近年は経営陣との対話を重視する穏当なアクティビストに転じたとされる。

 フジHDへの今回の書簡では、ダルトンが特にガバナンス面での改善を求めている。書簡には「貴社株式の7%以上を所有する大株主として、フジHDの対応に憤慨している」と明記されている。フジHDの対応が遅れたり、不透明さが残ったりすれば、スポンサー撤退などのリスクが高まると指摘。透明性の高い経営姿勢を示すよう求めた。

 中居を巡る問題については詳細な事実関係が明らかにされておらず、フジHDが迅速かつ誠実な対応を取ることが求められている。視聴者やスポンサーからの信頼を損なわないためには、企業としての説明責任を果たし、問題解決に向けた具体的な行動を示す必要がある。

 ダルトンはこれまで、新生銀行(現SBI新生銀行)に対し、自社株買いや役員報酬制度改革を提案して、注目を集めた。19年には、ローゼンワルド氏が報酬1円で新生銀行の社外取締役に就任する提案を行い、株主利益を重視した姿勢を見せた。今回も株主価値を損ねないための経営改革を求めている。

 フジHDは、ダルトンの要求をどう受け止めるのか。企業統治が問われる中で、経営陣がどのような対応を示すのかが注目される。透明性と信頼性のある経営姿勢が求められる時代において、対応を誤ればフジHD全体の価値が揺らぐ事態にもなりかねない。

(森岡英樹)

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