ほとんど知られていなかった
若者による、家族の介護の実態。
取材班の報道をきっかけに、
自治体が調査を開始、そして国が動き出す――
第25回新聞労連ジャーナリズム大賞・優秀賞
毎日新聞連載「ヤングケアラー 幼き介護」の書籍化!
学校に通いながら、家族の介護をする子どもたちがいる。
父母や祖父母、きょうだいに病気や障害があるために
一番身近にいる若者たちがそのケアを担ってきた実態は、
これまであまり知られていなかった。
家族だからという理由で「手伝い」としてしか見られてこなかった介護。
しかし家族を支えるために、自らの学業や生活を犠牲にせざるを得ないこともある。
彼ら「ヤングケアラー」たちの存在を認知してもらうため、
記者が丹念に取材し、追いかける過程を描いたノンフィクション。
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「ヤングケアラーって知ってます?」
向畑が唐突に尋ねた。
「......なにそれ」
耳慣れないその言葉は、家族を介護している子どもを指す用語だ、と向畑は説明した。介護の負担が重くなると、学業や友人関係、就職にも悪影響が出て、時にはその子の人生を左右してしまうケースもあるようなんです――
ヤングケアラーの多くは思春期にあたり、ケア(介護や世話)の内容は家事、身体的な介助、見守り、情緒面のサポートなど多岐にわたる。彼らは成人した介護者と違ってまだ社会経験が乏しく、年相応以上の責任や役割を課されてしまった場合、学校生活や心身の健康に悪影響が生じ、遅刻や欠席、成績の低下や友人関係に支障が出ることも少なくないとされる。
確実に存在しているはずのヤングケアラーは社会の陰に埋もれ、多くの人々の目に入らない「透明な存在」だった。(本文より)
《著者紹介》
毎日新聞取材班(まいにちしんぶんしゅざいはん)
毎日新聞特別報道部(当時)の記者による取材班。松尾良(デスク)、向畑泰司、田中裕之、山田奈緒が取材・執筆を担当した。本書の元になった連載「ヤングケアラー 幼き介護」で、第25回新聞労連ジャーナリズム大賞・優秀賞を受賞。
目次
はじめに
●祖母の高熱 消えた初恋
第1章 透明な存在
●中1の深夜、あてなき伴走
第2章 孤立する子「見るのがつらい」
●きょうだいと私
第3章 えっ? 国が全国調査?
●母を殺さなかった少女
第4章 1クラスに1人いる
●「私はヤングケアラー」 発信の意味
第5章 全国調査結果
●新たな一歩 もう後ろ向きじゃない
第6章 支援本格化へ
おわりに