止まらぬ気候変動、懐かしい景色が消えていく――
その地域だけによく見られる植物、というのは土着の神様たちのようなものではないか。
幼少期に南九州で見た巨大なシダ群、現在東京で住む地域に圧倒的に多いヤブミョウガ、八ケ岳ならマルバダケブキ。そういうものが木陰で群生をつくり、木漏れ日が差しているのを見ると、荘厳な気持ちになる。
「日本の底力」と呼ばれるものは、消えていこうとしている小さな神様たちそのものも、そうなのではないだろうか。
神様たちの居場所を、引っ越し先を、つくらなければならない。では、どこに?
自然をまっすぐに見つめ、日常を超えた領域を流れる〈もうひとつの時間〉に
自然の一部である私たちの核心を追うエッセイ。
【目次】
第一章 眠っている種
時間をかけて、取り戻す
何を見ているのか
人には見えない場所で
第二章 逡巡
繰り返すのか
藪のなか
冬の群れ
第三章 細胞の記憶
わかりたい気持ち
忖度と思いやり
新しい気づき
第四章 秘密の通路
知床岬携帯電話基地局
もっと豊かに
生きる力の痕跡
冬に向かう
第五章 もうひとつの時間
アジアの天気図
スープのこと
行きずりの縁
小さな神のいるところ