何も失っていない人などいない。台所から人生の愛おしさを描く感動ノンフィクション!
「こんなに悲しくても料理だけはやると落ち着くんだよね。作ったら食べなきゃだし、ちゃんとお腹がすく」
家族、恋人、夢、健康――大切なものを失いながら、それでもみんな立ち上がり、今日もごはんを作っている。
本書は、台所と食を通じて人生を立て直した人々を描くノンフィクションです。ネグレクトの親から離れ上京した学生、重いアレルギーを持つ子を育てる母、解体寸前の名建築で暮らす女性たち等々......22人の〈喪失と再生〉の物語を収録しています。
「食のプロの台所」の章では、料理家・小堀紀代美さん、フードライター・白央篤司さんも登場するほか、台所から時代の変化を読み解く「台所クロニクル」「台所小論」、取材で出会ったユニークな収納の工夫を写真とともに紹介した「収納宇宙」など、読み応え十分。
「&w」(朝日新聞ウェブマガジン)の大人気連載「東京の台所」書籍版最新作。
目次
はじめに
Ⅰ
酒と金魚
「これ、カンドー?」
「好き」のプロ伝道者
二一歳春。実母と縁を切る
愛のあと
台所クロニクル
Ⅱ
名建築は東京一不便な台所
本と恋と団地ごはん
八六歳。終わらぬ問いかけ
「この家もらってね」。言い遺してあの女性は逝った
二二年目の本心
ピンクのワンルームで母は
[食のプロの台所]
①小堀紀代美さん 「おかゆ、梅干」。忘れられない献立帳
②白央篤司さん 市井の食描く、フードライターの現在地
収納宇宙Ⅰ
Ⅲ
旅立つ前の最後の一杯
料理写真をつまみに酒を飲む男
冷蔵庫、再び
ぐでぐで親子
料理をいっさいやめたふたり
台所小論
Ⅳ
自分の機嫌は自分でとる
離婚とコロナと餃子が変えた未来
バレンタインのリスタート
続・深夜の指定席
収納宇宙Ⅱ
おわりに
著者について
長野県生まれ。編集プロダクションを経て1994年独立。市井の生活者を独自の目線で描くルポルタージュコラムおよびエッセイを執筆。連載『東京の台所』(朝日新聞デジタルマガジン『&w』)は本書をふくめ3冊が書籍化されている。著書に『それでも食べて生きてゆく 東京の台所』(毎日新聞出版)、『男の女の台所』『ただしい暮らし、なんてなかった。』(以上、平凡社)、『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ行」が苦手な君に』(ポプラ社)など多数。