「台所は楽屋に似ている。準備をした人を舞台に送り出したり、お疲れ様と迎え入れたり。いったんきれいになるけれど、次の舞台が始まればまた誰かが散らかす。ほっとして、取り繕う必要のない、使い手の素が出る場所。だから、素敵でなくていい」
台所は語る。NHK「あさイチ」などメディアで話題沸騰! 〈生活の楽屋〉から見える人生のよろこびと哀しみ。躓き、くじけながらも懸命に生きる人びとを描く感涙のノンフィクション!
目次
生活の楽屋――はじめに
Ⅰ それでも暮らしは続く
ふたつの転機に咲く/夫婦は「気を使う」のではなく「気にかける」/父と娘の船/孤独な学生生活。忘れられない夏/特攻隊の基地にて
取材一三年記
Ⅱ 転居と人生
最後の夢を支える古い台所/〝ふわん〟の原風景/祖父の米とだまこ鍋/料理の記憶がない一〇年を経て/賃貸大改造。原点は転勤先の孤独感/祖父母の愛したオーブンで今日もケーキを
[沖縄の台所]
①市場に毎日通勤する九一歳
②「東京以外」を選んだ二三歳の冷蔵庫
Ⅲ 社会とつながる
結婚と残業/教員の、台所に立てる日立てない日/紛争地域の心をつなぐ料理/喪失を癒やす料理教室
台所の今、台所の声
Ⅳ 家族のかたち
主(あるじ)が留守の隙に/「卒婚っていい言葉だなと思う」/はじまりの場所/家族の肖像
拠りどころと祈り――おわりに
著者について
1964年、長野県生まれ。編集プロダクションを経て1994年独立。市井の生活者を独自の目線で描くルポルタージュコラムおよびエッセイを執筆。2013年、連載『東京の台所』(朝日新聞デジタルマガジン『&w』)開始。著書に『ジャンク・スタイル』『男と女の台所』『こんなふうに、暮らしと人を書いてきた』(以上、平凡社)、『東京の台所』『それでも食べて生きてゆく東京の台所』(以上、毎日新聞出版)、『注文に時間がかかるカフェ』(ポプラ社)、『人生フルーツサンド』(大和書房)ほか多数。