空母4隻を撃沈され、日本海軍が大敗を喫したミッドウェー海戦。地を這うような取材で日米戦死者3418名の詳細を明らかにし、彼らと遺族の声を丹念に刻んだ渾身の記録。
空母「蒼龍」艦長・柳本柳作大佐と妻アヤ、生還した空母「赤城」艦長・青木泰二郎大佐の苦悩、米駆逐艦「ハマン」で戦ったイタリア系移民の息子、若くして散った命と残された日米の母の長き歳月。[全5巻]
【目次】
第四章 空母「蒼龍」艦橋
涙なき能(あた)わず
火焰のなかへ
平戸島の風と光
戦死七一一名
第五章 生きのこること
生還者の沈黙
「赤城」艦長
臨月の妻
家という傘
第六章 「ハマン」からの声
平和帰るの鐘
血の海
ほんの子供だった
第七章 子午線の東と西
軍事機密
父は「加賀」乗組員
三界(さんがい)に家なし
母と娘の縁
第八章 シアトルにて
生還機の「戦死」者
士官候補生の恋
グッド・メモリー
第九章 母の長命
山田コト
百歳のいのち
第十章 ナーシング・ホーム
メイン州バース
水兵生活
真珠湾の戦死者
弟は「ハマン」で
著者について
さわち・ひさえ
ノンフィクション作家。1930年9月3日、東京・青山生まれ。4歳のとき家族ぐるみで満州(中国東北部)へ移住。吉林で終戦を迎えた。1949年、中央公論社入社、経理部員として働きながら早稲田大学第二文学部(夜間)で学ぶ。卒業を機に「婦人公論」編集者に。将来を期待されていたが、28歳のときに僧帽弁狭窄症と宣告され、重い心臓病との二人三脚が始まる。1963年、編集次長をさいごに退社。以後約10年にわたり五味川純平の助手を務め、『戦争と人間』の注を執筆した。
著書に『妻たちの二・二六事件』『密約 外務省機密漏洩事件』『火はわが胸中にあり 忘れられた近衛兵士の叛乱 竹橋事件』(日本ノンフィクション賞、1978年)『昭和史のおんな』『石川節子 愛の永遠を信じたく候』『もうひとつの満洲』『雪はよごれていた 昭和史の謎 二・二六事件最後の秘録』『家族の樹 ミッドウェー海戦終章』『14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還』ほか多数。
『滄海(うみ)よ眠れ ミッドウェー海戦の生と死』は、資料篇にあたる『記録ミッドウェー海戦』とあわせ、1986年の菊池寛賞受賞。2008年度朝日賞受賞。