今、日本は混迷が続き、閉塞感が漂う社会状況にある。 現実の動きがあまりにも速く、しかも流動的で、見通しが困難な時代だと言えよう。とはいえ、私たちが個々のささやかな暮らしに向き合い、生きる意味を掘り下げ、 それぞれの人生を全うすることは、必ずできる。氾濫する情報やセンセーショナルな報道に惑わされず、 人生を、そして時代の変化をしっかりと「見抜く」ヒントが満載のエッセイ&オピニオン集。
最も必要なことの一つは「距離を置く」こと
匿名の烏合(うごう)の衆によってあっという間に世論もどきのものが形成され、 それが一挙に拡散してしまうネット社会の危うさを考えれば、 距離を置くということがどれほど重要であるかがわかるはずです。 「見抜く力」は、こうした形骸化した客観性や数の勢いに翻弄される 俗情的な世論に対して距離を置き、あくまでも「誠実に」 自分と時代を見つめる洞察力を指しているのです。 (はじめに より)
「第1章 人生を見抜く」では、これまで著者があまり語ってこなかったごく身辺的な事柄や事件、また「素顔」にかかわるような思い出や出会い、さらにこだわりや趣味について率直に綴る。
「第2章 時代を見抜く」では、日本やアジア、世界を揺るがす数々の事件や出来事を、その時々に切り取った断片ではなく、その前後や脈絡の中で、著者がどのように「見抜いているか」を読み取ることができる。
目次
はじめに 「見抜く力」とは何か著者について
姜 尚中(カン・サンジュン)
1950年、熊本県熊本市に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。国際基督教大学准教授、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授、聖学院大学学長などを経て、東京大学名誉教授。現在、熊本県立劇場理事長兼館長、鎮西学院学院長兼大学学長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍。おもな著書に『悩む力』『母―オモニ―』『続・悩む力』『心』『母の教え 10年後の「悩む力」』『朝鮮半島と日本の未来』『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』 (いずれも集英社)、『見抜く力』『生きるコツ』(いずれも小社)など多数。