なかにし礼、最後の小説。
がん再発による生命の危機の中で書かれ、著者の人生と音楽を集大成する一冊。
戦争の闇と歌謡曲の官能を繋ぐ秘密の回廊、そしていま、魂の無限の解放へ!
『夜の歌』の終章を読み終えて茫然としている。ずいぶん遠くまで翼をひろげ、思いをこめられたものである。読者もまたもう一度、敗戦前後の時代へと連れて行かれることだろう。「少年」は、涙をかかえて生きてきた「少女」(私)でもある。
............澤地久枝
覚醒と幻夢の交錯する黄泉の国へと、自らの〈来し方〉をすべて解き放ってさまよわせ、容赦なく暴き出したけしきの上に、さらに幾重にも色彩を重ねたあげく、涙の一滴に収斂されてゆく、比類ない自画像のゆらめき――。
............村松友視
著者について
なかにし れい/一九三八年中国黒龍江省(旧満洲)牡丹江市生まれ。立教大学文学部仏文科卒業。在学中よりシャンソンの訳詩を手がけ、その後、作詩家として活躍。日本レコード大賞、日本作詩大賞ほか多くの音楽賞を受賞する。二〇〇〇年『長崎ぶらぶら節』で直木賞受賞。著書に『兄弟』『赤い月』『天皇と日本国憲法』『平和の申し子たちへ』『生きるということ』『夜の歌』など多数。音盤に『なかにし礼と12人の女優たち』『なかにし礼と75人の名歌手たち』『昭和レジェンド 美空ひばりと石原裕次郎・なかにし礼』などがある。二〇一二年三月、食道がんであることを発表。先進医療の陽子線治療を選択し、がんを克服して仕事復帰。二〇一五年三月、がんの再発を明かして治療を開始。十月、完全奏功の診断を受けたことを公表した。