年も押し迫った2016年12月27日の夜6時。東京・浜松町の東芝本社で、綱川智社長の緊急記者会見が開かれた。2015年春に不正会計が発覚して以来、この本社では何度も緊急記者会見が行われてきた。ただ、16年5月に急な社長交代会見があって以来、緊急記者会見はなく、7カ月ぶりだった。普通のサラリーマンや公務員であれば28日の仕事納めを翌日に控え、年内の仕事の追い込みも終わろうとする時期だ。そうした時に綱川社長が発表したのは、「原子力事業で数千億円の損失が発生する可能性がある」という、衝撃の内容だった......。
日本経済史上空前の規模の巨額損失を発表することになった東芝。巨額損失の舞台になった子会社の米原子力大手ウェスチングハウスに対する東芝経営陣の内部統制がまったく働いていなかった。不適切な会計処理が発覚し、さらなる巨額損失が判明。優良事業の半導体の売却など混迷を続けている。解体、そして"消滅"の危機に直面した背景や現状をリポートする。ベストセラー「東芝不正会計 底なしの闇」の第3弾。
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序著者について
いまざわ まこと/毎日新聞経済プレミア編集長兼論説委員
1983年、毎日新聞社入社。89年経済部。税・財政や日銀、銀行、製造業、流通などを担当。2013年論説委員(税・財政、IT担当)。15年から現職。著書「東芝 不正会計 底なしの闇」がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機 『名門』没落の代償」、共著に「カリスマ鈴木敏文、突然の落日」(いずれも毎日新聞出版)。16年度城西大非常勤講師。日大経済学部、東洋大法学部でも教壇に立つ。