「死にたいほどつらい」
ごく普通の人が、あっけなく最下層(アンダークラス)に。
一度落ちたら這い上がれないのか?
敏腕ソーシャルワーカーが貧困の惨状を明らかにし、解決策を提示する。
「お金を稼げない」「家賃が払えない」「もう死ぬしかない」
社会福祉士の著者のもとには、生活困窮に陥っている人たちからのSOSが次々と届く。
日本で新型コロナウイルス感染者が確認されて1年余が経過した。感染拡大で生活や雇用に深刻な影響が及んでおり、仕事もお金も住まいも失った人たちは増加の一途をたどっている。とりわけ非正規雇用で働く多くの女性、若年層、高齢者の暮らしはこの1年で劇的に悪化した。さらに、2人に1人くらいの相談者が「死にたい」と訴えていることにも強い危機感を抱いている。収束の見通しは依然として立たず、募る不安が心身にダメージを及ぼしていることが窺える。
現場で今、何が起きているのか。その実態についてもっと広く社会に伝える必要があると考え、執筆したのが本書である。今必要なのは、「自分とは無縁ではない」と気づくことだと思う。本書では、貧困に至った相談者の事例と対処法を数多く紹介している。登場人物たちの体験を通じて、「自己責任なんてとんでもない、誰もがいつ貧困状態になってもおかしくないのだ」という認識への転換を強く促したい。
これほどまでに大量の生活困窮者が出るということは、私たちが築き上げてきた社会のどこかに歪みがあるのではないかと、この機会にぜひ現実を見つめ直していただきたい。本書が、徹底して貧困問題に向き合い、原因を突き詰め、問題を解決するために何ができるのかを考えるきっかけとなり、現場から社会を変える「ソーシャルアクション」の一助となれば本望である。
目次
第1章 コロナ禍が浮き彫りにした貧困と格差
第2章 コロナ禍で窮地に追い込まれる女性たち
第3章 コロナが明けたら美人さんが風俗嬢やります
――「ナイナイ岡村風俗発言」を検証する
第4章 コロナ禍の貧困危機から命と暮らしを守る
――支援・相談窓口
第5章 誰一人取り残さない社会を実現する
著者について
1982年生まれ。社会福祉士。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程修了。NPO法人ほっとプラス代表理事、生存のためのコロナ対策ネットワーク共同代表、反貧困ネットワーク埼玉代表。聖学院大学客員准教授(公的扶助論)、北海道大学公共政策大学院フェロー。生活保護や生活困窮者支援のあり方に関する活動と提言を行う。著書に『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』 (朝日新書)、『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』 (講談社現代新書) 、『貧困クライシス 国民総「最底辺」社会』(毎日新聞出版)、『中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち―』 (扶桑社新書) 、『棄民世代 政府に見捨てられた氷河期世代が日本を滅ぼす』(SB新書)などがある。