日本では貧困が広がり続けている。それも驚くほど速いスピードで。気づいたら身近に迫っていて、身動きができなくなっているかもしれない。
これまでも私は、「下流老人」や「貧困世代」という言葉で警鐘を鳴らしてきている。
本書では、そんな拡大し続ける貧困について、全世代を網羅して見ていく。
もはや高齢者も若者も子どもも、そして男性も女性も貧困に苦しんでいる。いまだかつてこのような時代はなかったはずだ。
東南アジアにはスラムで生活して路上で寝ている子もいる、日本はまだ豊かである、といった論には異議を唱えたい。
本書でも詳述するが、貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があり、路上で寝なければならないような壮絶な貧困は絶対的貧困と呼ぶ。
日本では、健康で文化的、そして人間らしい生活ができないようなもの、いわゆる相対的貧困が拡大しているのだ。
「今は貧しいけれど地道に働いていれば、幸せな老後が待っている」という希望を失った社会は、絶対的貧困ではないけれども、常に「貧困クライシス」にさらされ、極めてストレスフルだと私は考える。
幸い、ほっとプラスには年間約500件を超える相談があり、支援者である私たちは、極めて貧困が見えやすい位置にいる。見えてきた貧困を少しでも社会に伝え、多くの人とクライシスを共有していきたい。そして、早めに貧困に気づき、対処できる力を養っていただきたいと切に願う。
本書を通じて、日本が生涯貧困に至った背景と実態をつまびらかにし、起死回生の道を多くの読者と模索したい。
目次
●第1章 若者の貧困著者について
1982年生まれ。社会福祉士。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程修了。NPO法人ほっとプラス代表理事、生存のためのコロナ対策ネットワーク共同代表、反貧困ネットワーク埼玉代表。聖学院大学客員准教授(公的扶助論)、北海道大学公共政策大学院フェロー。生活保護や生活困窮者支援のあり方に関する活動と提言を行う。著書に『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』 (朝日新書)、『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』 (講談社現代新書) 、『貧困クライシス 国民総「最底辺」社会』(毎日新聞出版)、『中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち―』 (扶桑社新書) 、『棄民世代 政府に見捨てられた氷河期世代が日本を滅ぼす』(SB新書)などがある。