原子力の場にいた人間として、私には原発をやめさせることができなかった重い責任があります。
もちろん、原子力を進めてきた国と電力会社には猛烈に重い責任があります。
同時に、日本人一人ひとりにも責任があると私は思っています。
2011年3月11日に起きた東京電力福島第一原発事故は、10年経過した今も収束できず、被災者の苦難は依然として続いている。一方、加害者である東京電力と日本政府は、「原発事故の反省と教訓を風化させることなく、福島への責任を果たしていく」と発言しながらも、原発を推し進めている。
本書では、福島第一原子力発電所の現状、見逃してはならない原発にまつわる諸問題(世界に逆行する日本の原発輸出政策/汚染水の海洋放出問題/原子力産業の現在/原発マネーに群がる人たち/放射性廃棄物、処分場誘致の動き〈北海道寿都町・北海道神恵内村〉/原発再稼働をめぐる立地自治体の葛藤〈東日本大震災で被災した東北電力女川原発の再稼働・40年超の関西電力高浜原発、再稼働手続き開始〉)など、著者だからこそ知り得た稀有な情報を取り上げ、解説する。
原発事故の風化に警鐘を鳴らし、原発の危険性を説き、原発ゼロ社会実現への思念を綴った究極の反原発論。
目次
■第1章 福島第一原子力発電所で何が起きたのか著者について
こいで ひろあき/1949年、東京生まれ。工学者(原子核工学)。元京都大学原子炉実験所助教。1968年、原子力の平和利用に夢を抱いて東北大学工学部原子核工学科に入学。1970年、女川での反原発集会への参加を機に、原発をやめさせるために原子力の研究を続けることを決意。1974年、東北大学大学院工学研究科修士課程修了(原子核工学)。専門は放射線計測、原子力安全。著書に『原発のウソ』(扶桑社新書)、『原発はいらない』『この国は原発事故から何を学んだのか』『原発ゼロ』(いずれも幻冬舎ルネッサンス新書)、『騙されたあなたにも責任がある 脱原発の真実』(幻冬舎)など多数。2015年3月の定年退官を機に、信州へ移住。