将棋の格言、「一歩千金」を彷彿させます。
長い旅路の末についに辿り着く再生の物語です。
――羽生善治(棋士)
その駒には魂が宿っている――。棋士をめざしながら挫折した小磯竜介は、偶然から戦死した大叔父が駒師であったことを知る。大叔父は自ら考案した書体「無月」の駒を完成させた後、戦地へ発ったという。「天性の駒師」の生涯に強く惹かれた竜介は、この駒の行方を追い始める。東京からシンガポール、マレーシア、アメリカへ――そして旅の終わり、彼が目にした驚きの光景とは? 第34回将棋ペンクラブ大賞を受賞した傑作長編。
目次
プロローグ――挫折
第Ⅰ部
一、戦死した駒師
二、数寄屋橋のうえで
三、見えない炎、見えない名月
四、路地の奥
五、すべてが灰に
第Ⅱ部
六、聖ラザロ教会
七、国境を越える
八、ブルックリンの夕暮れ
エピローグ――再起
解説――幻の駒を追い求める(川本三郎)
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