「自分が機嫌よくいられる場所」を見つけよう
「最悪の時代」を生き抜くためのウチダ流哲学
【本書の内容】
特に今の若者たちはほんとうに厳しく、生きづらい時代を生きていると思う。
僕が10代だった1960年代は明るい時代だった。
米ソの核戦争が始まって世界が滅びるのではないかという恐怖が一方にはあったが、
そんなことを日本人が心配しても止める手立てもない。
「どうせ死ぬなら、今のうちに楽しんでおこう」
という半ばヤケクソの、ワイルドでアナーキーな気分が横溢していた。
だから、自由で、民主的で、いろいろな分野で次々とイノベーションが
起きるとても風通しのいい時代だった。
それに比べると、今の日本の社会はとても風通しが悪い。息が詰まりそうだ。
誰もが「生きづらさ」を感じている。
世界は移行期的混乱のうちにあり、
あらゆる面で既存のシステムやルールが壊れかけているのに、
日本の社会はその変化に柔軟に対応できず、硬直化している。
当代きっての思想家が、この国の閉塞感の原因を解きほぐし、解決のヒントを提示する。
巻末に「あとがき リーダビリティとは何か」を加え、待望の文庫化!
目次
■第1章 矛盾に目をつぶる日本人
私たちは歴史から何も学ばない
小津安二郎の写真から
「黒船」を歓迎する感性
知性を憎む知識人
隣国に学ぶことを忘れた日本
僕が家庭科を大事だと思うわけ
空虚感を抱えたイエスマン
情理を尽くして説く―書き手に求められているもの
「新潮45」事件を振り返る
無言でも無駄話でも「会議」になる
■第2章 気が滅入る行政
日本社会全体が「株式会社化」している
安倍政権と米朝対話
#MeToo運動は「セクハラ狩り」か
思考停止のためのルール
ビンボくさい日本のカジノ
水は誰のものか
崩壊へのタイムリミット
大阪万博という幻想
1960年代は一億総思い込みで上昇した
東京五輪のために「サマータイム導入」の愚
■第3章 ウチダ式教育再生論
教育まで「株式会社化」したこの国の悲劇
格付けできないのが「知」
企業が望む「即戦力」の正体
「イエスマンシップ」に屈した教職員
街場の東大論
「金魚鉢」のルールとコミュニケーションの誤解
「最悪の時代」を生き抜くための学び方
■第4章 平成から令和へ生き延びる私たちへ
平成から振り返る、昭和的なもの
ウチダ式ニッポン再生論―東北に優先して資源を集中させよ
学校の「安全神話」が起こす悲劇
天皇というフィクション 「天皇主義者」宣言について聞く―統治のための擬制と犠牲
ニッポン「絶望列島」化―「平成」の次を読み解く
再びアメリカに敗れた日本―「平成」を総括
日本人の「自由」を再定義する
中国の若者よ、マルクスを読もう
■第5章 人生100年時代を生きる
破局の到来
定年後をどう生きるか
街場の2019年論
文庫版あとがき リーダビリティとは何か
著者について
内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授、芸術文化観光専門職大学客員教授、昭和大学理事。東京大学文学部仏文科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。神戸で哲学と武道研究のための私塾凱風館を主宰。合気道七段。『私家版・ユダヤ文化論』で第6回小林秀雄賞、『日本辺境論』で第3回新書大賞、執筆活動全般について第3回伊丹十三賞を受賞。著書に『ためらいの倫理学 戦争・性・物語』『先生はえらい』『寝ながら学べる構造主義』『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』『レヴィナスと愛の現象学』『死と身体』『街場の現代思想』『困難な成熟』『直感はわりと正しい 内田樹の大市民講座』『武道的思考』『そのうちなんとかなるだろう』『サル化する世界』『日本習合論』『コモンの再生』『コロナ後の世界』『レヴィナスの時間論 「時間と他者」を読む』、池上六朗氏との共著『身体の言い分』など多数。