書くという行為には、謎がひそんでいる。
人はなぜ書くのか?
すごい文章はどうやって生まれるのか?
書かずには生きられない人々を追いかけてきたノンフィクション作家が、
探り、論じ、告白する、「執筆と人生」。
本書では、これまで私が書いてきた「書くこと」と「生きること」のかかわりをテーマにした文章を集めた。エッセイがあり、短い評伝があり、文庫解説や書評がある。
対象とした書き手はさまざまで、会うことのできた人もいれば、それが叶わなかった人もいるが、全員が「すごい文章」をこの世に遺した人だ。
【本書の構成】
第一章 女がものを書くということ─―抗う言葉、記憶の声
声は消える
満身創痍の人─―追悼・森崎和江
「意志ばい。人間は、意志ばい」
書評『まっくら─―女坑夫からの聞き書き』森崎和江=著
水俣、石牟礼道子さんへの旅
「書く女」の肖像① 歌人 中城ふみ子─―恋と死のうた
「書く女」の肖像② 作家 吉野せい─― 相克と和解
第二章 書かずには終われない─―当事者たちの戦争
世代を超えて手渡されるもの
『父の戦記』(週刊朝日=編)を読む
戦時下の「いま」を伝える日記
『吉沢久子、27歳の空襲日記』(吉沢久子=著)を読む
満州国皇帝の弟妃による波乱万丈の手記
『流転の王妃の昭和史』(愛新覚羅浩=著)を読む
半藤少年が十五歳で獲得した「歴史家の目」
『日本国憲法の二〇〇日』(半藤一利=著)を読む
第三章 「ひと」を追いかけて─―私が出会った表現者たち
「本当のこと」を書く覚悟
『朝のあかり─―石垣りんエッセイ集』(石垣りん=著)を読む
紙碑を建てる
『清冽─―詩人茨木のり子の肖像』(後藤正治=著)を読む
表現者の肖像① 詩人 谷川俊太郎 言葉の容れものになる
表現者の肖像② 写真家 石内都 傷ついたものたちの声を聴く
当事者として沖縄の女たちを撮る
石川真生写真展「赤花 アカバナ――沖縄の女」によせて
眼窩の奥の闇
比嘉豊光の写真によせて
「呪われた眼」を持つ者の壮絶な記録
書評『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』小林紀晴=著
第四章 生きて、書き続ける─―ノンフィクションとはなにか
事実を書く・人間を書く
血となり肉となったノンフィクション10冊
混沌の中から言葉が生まれる瞬間
『流星ひとつ』(沢木耕太郎=著)を読む
問いに出会う才能、問いを手放さない力量
『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(河合香織=著)を読む
インタヴュー
なぜ書くのか─―「内臓の言葉」を探して
書くことの謎 あとがきにかえて
目次
【第一章】女がものを書くということ──抗う言葉、記憶の声
島尾ミホ/森崎和江/石牟礼道子/中城ふみ子/吉野せい
【第二章】書かずには終われない──当事者たちの戦争
吉沢久子/愛新覚羅浩/半藤一利
【第三章】「ひと」を追いかけて──私が出会った表現者たち
石垣りん/茨木のり子/谷川俊太郎/石内都/石川真生/比嘉豊光/古屋誠一
【第四章】生きて、書き続ける──ノンフィクションとはなにか
沢木耕太郎/山本作兵衛/角田房子/岩川隆/石原吉郎/宮柊二/河合香織
著者について
ノンフィクション作家。1961 (昭和36)年、熊本市生まれ。北海道大学文学部卒業後、編集者を経て文筆業に。『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』(新潮文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。同書は米、英、仏、伊など世界8カ国で翻訳出版されている。『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』(新潮文庫)で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞を受賞。『昭和二十年夏、僕は兵士だった』『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』(以上、角川文庫)、『昭和の遺書』(中公文庫)、『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(文春文庫)、『百年の手紙 日本人が遺したことば』『原民喜 死と愛と孤独の肖像』『戦争ミュージアム──記憶の回路をつなぐ』(以上、岩波新書)、『この父ありて 娘たちの歳月』(文藝春秋)など、著書多数。