『苦海浄土』の本質に迫る。
「密着取材」と「渾身介護」で神話的作家・石牟礼道子(2018年没)の最晩年に寄り添ったジャーナリスト入魂の最新評伝。読売文学賞受賞後第一作。
評伝執筆を志した著者は、2013年後半から石牟礼道子のもとに通い続けた。取材をしながら、本の朗読や手紙の代筆をへて、起居の手助けなど介護の一部も担うようになった。そして迎えた最期の日ーー。
「道子さんのそばにいるのであれば、道子さんのことを書かねばならない。渡辺(京二)さんの言を待つまでもなく、書かないと消えてしまう。そうやって夢中で書いてきた日々の文章をまとめたのが本書である。日記、インタビュー、対話などスタイルは違っていても、石牟礼さんのことを書き残したいという気持ちは一貫している。私は書くことで道子さんのそばにいたかったのだ」(本文より)
『評伝 石牟礼道子ーー渚に立つひと』(2017年、新潮社)で読売文学賞を受賞。その刊行後の、亡くなるまでのかけがえのない日々と、一周忌をむかえますます存在感を増してゆく文学者の本質を数々の肉声とともにつづる。
米本浩二(よねもと・こうじ)
1961年、徳島県生まれ。徳島県庁正職員を経て早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。在学中に『早稲田文学』を編集。毎日新聞記者。石牟礼道子資料保存会研究員。著書に『みぞれふる空――脊髄小脳変性症と家族の2000日』(文藝春秋)、『評伝 石牟礼道子――渚に立つひと』(新潮社刊)で第69回読売文学賞「評論・伝記賞」を受賞。