著者は、20世紀が科学技術の世紀だとしたら、21世紀は「心の世紀」になると語ります。そして、人間の生き方、商売や経営に至るまで、成功するには倫理観「心」を鍛えることが重要だと説いています。
これまでにもマックス・ウエーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、伊藤忠商事の創業者の伊藤忠兵衛の精神でもある近江商人の「三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)」の精神など、洋の東西を問わず、健全な資本主義の発展には、倫理の必要性が説かれています。
著者は、伊藤忠商事の伊藤忠兵衛の商売に対する倫理観である「商売道」こそ、ビジネスパーソン、特に商社マンに絶対に必要な心得だとします。著者自身、伊藤忠商事の社長時代に約4000億円の不良資産の一括処理という「痛みを伴う改革」を決断をしました。それが成功できたのも、経営者と社員との心と心の信頼関係があったからだと語ります。
具体的には、社員に商売における「クリーン、オネスト、ビューティフル」の重要性を説き、自らの給料をゼロとし、社用車を使わず電車通勤にするなど、経営者としての倫理を重視し、また全責任は経営者自らが取ることを明確にしたことで、社員との信用・信頼関係を築くことが出来ました。
本書は、大手企業の不祥事が続くなかで、商売や経営における心の重要性を問う、丹羽宇一郎版の『論語と算盤』です。丹羽氏は、本書を「商社マン必読の書にしたい」と語っています。
<目次>
はじめに
第一章 21世紀は心の時代
第二章 心の教育
第三章 心なくして商売はない
第四章 クリーン・オネスト・ビューティフル
第五章 心を鍛える
終章 伊藤忠兵衛記念館を行く
あとがき
<参考資料>商売道の精神と倫理(「滋賀大学名誉博士」称号授与記念講演録)
著者について
にわ ういちろう/1939年生まれ。伊藤忠商事名誉理事、前中華人民共和国特命全権大使。名古屋大学卒業後、伊藤忠商事に入社。98年に社長に就任。99年に約4000億円の不良資産を一括処理を決断し、翌年度決算で同社史上最高益を記録。2010年6月に民間出身で初の中国大使に就任。