安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の成功を背景に、順調に上昇してきた日本株相場だが、今年に入り、大きな波乱が起こりつつある。その波乱要因は、ギリシャ危機と中国株式市場の乱高下である。
今後、ギリシャ危機は、株式市場にどのような影響を与えるのか。著者は、1金融市場混乱シナリオ、2世界的株高シナリオという、2つの正反対のシナリオを提示し、どちらが実現の可能性が高いかを検討している。
1の金融市場混乱シナリオでは、ギリシャ危機が世界に伝播し、世界的に株価が下落することになる。このシナリオで特に懸念されるのは、厳しい経済状況にあるロシア、ブラジルなどの新興国である。
2の世界的株高シナリオでは、ギリシャ危機や中国危機が予想以上に拡大しない限り、世界的な金融市場の混乱は避けられるとみる。このため、「適度な」危機が長続きすれば、世界の中央銀行の金融緩和は長続きするため、世界的な株高が続くことになる。
いずれにしても、歴史的にみて永遠に景気が拡大することはなく、いまの株高と円安が永遠に続くことはない。景気サイクルが存在する以上、やがては、相場が反転することになる。大きく株高と円安になるようであれば、その反動で強烈な株安と円高がやってくることになる。
本書は、金融業界30年以上の金融のプロ中のプロの著者が、ギリシャ危機と中国株下落の世界市場に与える影響を分析し、次のバブルとその崩壊のシナリオを紹介する。
<目次>
はじめに
序章 ギリシャ危機と中国危機が世界を揺り動かす
第一章 世界を揺るがすギリシャ危機
1 ユーロバブル崩壊がギリシャ危機を生んだ/ 2 なぜギリシャ危機は長期化しているのか
第二章 ギリシャ危機に関連する組織と制度
1 欧州連合の組織とギリシャ/ 2 欧州中央銀行と金融制度 / 3 IMFとソブリン危機の歴史
第三章 ギリシャ危機の構造的な背景
1 EUとユーロは危機の中で生まれた/2 ユーロの本質は安全保障同盟
第四章 バブルとバブル崩壊は繰り返す
1 株式相場を動かす要因とは何か/2 アベノミクス相場を展望する
第五章 世界の名投資家に学ぶ危機の対処法
1 世界の名投資家は危機の度に資産を築く/2 ギリシャ危機が世界の株式市場に与える影響
あとがき
著者について
ふじた つとむ/シティグループ証券株式会社取締役副会長。シティ資本市場研究所理事長。一橋大学大学院博士課程修了、経営法博士。慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員。慶應義塾大学「グローバル金融市場論」講師。2006~2010年日経ヴェリタス人気アナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。内閣官房経済部市場動向研究会委員、経済産業省企業価値研究会委員、環境省環境金融行動原則起草委員会委員、早稲田大学商学部講師、第20回日本証券アナリスト大会実行委員会委員長などを歴任。米国公認証券アナリスト、ニューヨーク証券アナリスト協会レギュラー会員、日本証券アナリスト協会検定会員。