歌舞伎の〈いま〉を知る!
近年の市川海老蔵をとりまく舞台模様を中心に、見るべき役者、人間関係、注目すべき演目などを解説。
読めば舞台がグンと近くなる歌舞伎読本。
2018-01-22<本書より>
「基本的に私はスター主義を支持する。『人気スターが大劇場(歌舞伎座)で主役をつとめる』ことが正しいと考えている。別の角度から言えば、『大劇場で主役を演じなければ、どんなにうまくても意味がない』ともなる。
当然、異論はあるだろう。脇役がいなければ演劇は成り立たないのは当然のことだ。脇役を貶めるつもりはまったくない。だがスターがいない演劇は、私にはつまらない。
『スター』というのは『輝いている人』のことで、無名の役者が抜擢されてスター誕生となることもある。その可能性があるから、面白い。
[略]
この本の主人公である海老蔵と重要人物である猿之助は、あくまで体制内改革者であり、秩序を完全に破壊しようとはしていない。むしろ、日本俳優協会などない徳川政権期、つまりスター主義しかなかった時代の秩序への回帰を主張しているように思える。
この本は『伝統』がどちらにあるのか、スター主義なのか年功序列なのかという思想闘争のレポートでもある」
目次
●第一部 海老蔵を見る――現代の貴種流離譚著者について
なかがわ ゆうすけ/1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。出版社IPCの編集長として写真集を中心に美術書を編集、ソ連の出版社とも提携した。後、出版社アルファベータを設立し、代表取締役編集長に(2014年まで)。ドイツ、アメリカ等の出版社と提携し音楽家や文学者の評伝や写真集を編集・出版。クラシック音楽、歌舞伎、映画、歌謡曲、マンガなどの分野で旺盛な執筆活動を続ける。おもな著書に『カラヤンとフルトヴェングラー』『第九』『昭和45年11月25日』(以上、幻冬舎新書)、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『山口百恵』『松田聖子と中森明菜』(以上、朝日文庫)、『角川映画1976―1986』(KADOKAWA)、『大女優物語―オードリー、マリリン、リズ』(新潮新書)などがある。