ソニーの「経営の原点」とは何か。それは、「挑戦」という言葉である。
ソニーは、トランジスタラジオ、ウォークマンなど、人々のライフスタイルを一変させるようなエレクトロニクス製品を次々と市場に送り出してきた。
常に新しいものに挑戦する姿勢こそが、ソニーの創業の遺伝子である。
それは、エレクトロニクスの分野だけではなく、資金調達やM&A(企業の合併、買収)など、いわゆるコーポレートファイナンスの分野でもソニーは挑戦し、その先駆者であり続けてきた。
著者の佐野角夫氏(ソニー元常務)は、1961年にソニーに入社し、同社が「世界のソニー」へと急成長していく過程で、主としてソニー創業者の一人である盛田昭夫氏の片腕として、資本市場からの資金調達やM&A、株主対策、IR(投資家向け広報)、CSR(企業の社会的責任)などの業務を手がけてきた実務家である。
佐野氏は、経営トップと共に、株式市場価格に基づく時価発行増資や無担保転換社債発行、日本企業として初のニューヨーク証券取引所への上場や米国での債券の「格付け」の取得、さらにはCBSレコードやコロンビア映画など、米国企業に対する大型買収など、前例のないことに挑んできた。またIRや消費者や環境対応など、CSRへの取り組みなどでも他社の先駆けとなった。
さらに盛田氏と共に日本企業が米国のような原則自由というルールで、海外企業と平等に競争できるよう日本を変えたいとの思いで、企業法制や税制、資本市場の改革に取り組んできた。その結果、企業活動を規制してきた日本の企業法制は、1990年代の終わりに原則自由へと改革が実現した。
本書は、先駆者、盛田昭夫氏の片腕として、新しいことに挑戦し続けた実務家が、自らの貴重な経験をつづったソニーの「もう一つの成長物語」である。
プロローグ
第一章 ソニーもう一つの挑戦
Ⅰ 挑戦の姿勢を忘れるな
Ⅱ 海外への夢を描く
Ⅲ 国内販売網作りで奔走
Ⅳ 初の米国、一流に触れる
第二章 ウォール街から学ぶ
Ⅰ 常識覆した時価発行増資
Ⅱ 直接金融を目指して
Ⅲ ニューヨーク上場
Ⅳ 上場、ロンドン、パリなど18市場に
第三章 IR事始め
Ⅰ 米国で開眼
Ⅱ 技術力信じ、投資家行脚
Ⅲ 格付け会社に新製品説明
第四章 東京から世界へ
Ⅰ 海外駆け巡る
Ⅱ サウジ向けの転換社債
Ⅲ 欧州ソニー、IRオフィス開設
第五章 株主総会民主化の戦い
Ⅰ 体張り特殊株主に対応
Ⅱ 13時間半の総会
Ⅲ 簡単でなかった決算期変更
第六章 海外M&A戦略
Ⅰ 大暴落契機にCBSレコード買収
Ⅱ コロンビア映画買収
Ⅲ のれん代償却に悩む
Ⅳ 株価急落後SEC調査
第七章 子会社上場
Ⅰ 3社の上場
Ⅱ 上場子会社、社長へ
第八章 資本市場での挑戦
Ⅰ 資本市場の改革
Ⅱ 個人投資家説明会
Ⅲ ワラント(新株引受権)によるストック・オプション
第九章 社会的責任(CSR)を果たす
Ⅰ 消費者対応で先駆
Ⅱ 変革迫った一人の消費者
Ⅲ ソニーの環境経営と情報開示
Ⅳ 環境経営推進
第十章 先駆者の歩みを支えて
Ⅰ 盛田昭夫(ファウンダー)の先見性
Ⅱ 企業法制に挑んだ30年
あとがき