あなたの「物語(ナラティブ)」が狙われている!
不安や怒りを煽り、社会を分断する「情報兵器」のメカニズム。
新聞協会賞2年連続受賞&ボーン・上田記念国際記者賞受賞の
ジャーナリスト、待望の最新刊!
「ナラティブ」という英語の表現がある。
日本語では「物語」「語り」「ストーリー」「言説」などと訳されることが多い。
物語性を示す言葉で、これほど広い意味を持つ単語は日本語にはない。
だが、英語圏では日常的に使われている言葉でもある。
私たちは頭の中で、無意識的にナラティブを語り続けている。
学校や職場に向かう道すがら、「今日はどんな一日にしよう」とか、家路につく電車や車の中で、「明日はどんな一日になるだろう」と思い浮かべながら、いつの間にかストーリーを創っている。ハッピーな物語になる時もあれば、自己嫌悪の物語に終始する時もある。
頭の中に浮かぶナラティブは私たちの感情をかき立て、個人を、そして社会を突き動かす。
私たちはナラティブに囲まれて生きているにもかかわらず、ナラティブがいかなる力を持ち、なぜ人間を虜にするのか、そのメカニズムをほとんど知らない。
本書では、近年国内外で起きたさまざまな事件や現象の背後に潜むナラティブのメカニズムとその影響力を解き明かす。
【本書のおもな内容(一部抜粋)】
第1章 SNSで暴れるナラティブ
●養老孟司さん「(ナラティブは)脳が持っているほとんど唯一の形式」
●安倍晋三元首相銃撃件と小田急・京王線襲撃事件
●インセルがはまる陰謀論ナラティブ
●「ローンオフェンダー(単独の攻撃者)」「無敵の人」「強い犯罪者」の時代
●岸田文雄首相襲撃未遂事件と現代型テロ
●最強の被害者ナラティブ
第2章 ナラティブが持つ無限の力
●AIで「潜在的テロリスト」をあぶり出す
●人間が生まれながらにして持つ「人生物語産生機能」
●思考のハイジャック――ペテン師からアルゴリズムへ
●WBC栗山英樹監督が語った「物語」
第3章 ナラティブ下克上時代
●伊藤詩織さんが破った沈黙
●五ノ井里奈さんが突き崩した組織防衛の物語
●元2世信者、小川さゆりさんの語り
●「選挙はストーリー」と語った安倍元首相の1人称政治
第4章 SNS+ナラティブ=世界最大規模の心理操作
●ケンブリッジ・アナリティカ事件の告発者に聞く
●狙われる「神経症的な傾向のある人」
●情報戦を制す先制と繰り返し
●トランプ現象という怒りのポピュリズム
●ナゾのイスラエル・情報工作企業
●「日本は特に危ない」
●米国防総省の「ナラティブ洗脳ツール」開発
●SNSを舞台とする「認知戦」へ
●イスラエルのSNS監視システム
●中国の「制脳権」をめぐる闘いとティックトック
第5章 脳神経科学から読み解くナラティブ
●幼少期の集中教育は何をもたらすのか
●向社会性が低いとカモにされやすい?
●孤独な脳は人間への感受性を鈍化させる
●陰謀論やフェイクニュースにだまされない「気づきの脳」
第6章 ナラティブをめぐる営み
●保阪正康さんがつむぐ元日本兵の語り
●柳田邦男さん「人は物語を生きている」
●ナラティブ・ジャーナリズムとは
●SNS時代の社会情動(非認知的)スキル
著者について
毎日新聞編集委員。1965年生まれ。『サンデー毎日』記者時代に「最強芸能プロダクションの闇」「少女売春」などをテーマに調査報道。社会部では防衛庁(当時)による個人情報不正使用に関するスクープで2002、2003年の新聞協会賞を2年連続受賞。ワシントン特派員として米陸軍への従軍取材などで「対テロ戦争」の暗部をえぐり2010年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。エルサレム特派員時代は暴力的過激主義の実態を調査報道した。英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所元客員研究員。イスラエル・ヘルツェリア学際研究所大学院(テロリズム・サイバーセキュリティ専攻)修了(Magna Cum Laude)。「国際テロ対策研究所(ICT)」研修生。テルアビブ大学大学院(危機・トラウマ学)修了(首席)。単著に『勝てないアメリカ─「対テロ戦争」の日常』(岩波新書)、『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地』(講談社現代新書)、『歪んだ正義「普通の人」がなぜ過激化するのか』(小社)など。