「戦争の描き方に、この方法があったとは!」
戦時に統制下に置かれた新聞は、戦地では支配の末端をも担った。
若き日「百姓だって人間だ」と書いた記者・清六は
いかに働き、いかに愛し、いかに死んだのか。
――東京大学・加藤陽子教授、推薦!
【内容】
太平洋戦争末期、爆撃下の洞窟で新聞を作り続けた記者がいた。
毎日新聞の伊藤清六(1907~1945)。
死と隣り合わせの兵士たちがむさぼるように読んだという、
ガリ版刷りの新聞「神州毎日」。
壕の中でペンを走らせたとき、彼は何を思い、何を願ったのか。
その時、新聞は何を伝え、何を伝えなかったのか。
時が流れて75年後、自らも記者となった著者が、
祖先の足跡をたどる旅に出る――
2020年7月~8月に毎日新聞に掲載され、第26回平和・協同ジャーナリスト基金賞・
奨励賞と第15回疋田桂一郎賞を受賞した連載、待望の書籍化。
貧しい農村に生まれ、幼い頃に両親を亡くし、それでも自分のできる努力を重ねて手を伸ばし続けた清六。それなのに、気がついてみれば後戻りできないところにいた。清六は、どうすればよかったのだろう。どうすれば、戦争をあおる記事を書かずにすんだのだろう。故郷から遠く離れた場所で死なずに済んだのだろう。戦争へと時代の流れを押し進めた記者の責任は重い。そして、私自身を含む誰もが「清六」になりうることに身震いする。(本文より)
【著者紹介】
伊藤絵理子(いとう・えりこ)
1979年生まれ。2005年、毎日新聞社入社。仙台支局、経済部、情報調査部、「開かれた新聞委員会」事務局兼社会部、阪神支局を経て、現在東京本社コンテンツ編成センター勤務。
目次
プロローグ
第一章 原点
第二章 従軍
第三章 南京
第四章 統制
第五章 暗転
第六章 彷徨(ほうこう)
エピローグ
刊行にあたって
関連略年表
主要参考文献