13年間にわたる毎日新聞・長期連載「平和をたずねて」(第22回坂田記念ジャーナリズム賞受賞)圧巻の集大成。
日本近代史の中で、個人の体験をとらえ直し、特攻作戦の「本質」に迫る、渾身のノンフィクション。
学徒出陣(1943)により、岩井忠正氏は慶応大学から、忠熊氏は京都大学から徴集され、海軍特攻隊に所属する。待ち受けていたのは、「回天」や「震洋」の「必死の特殊兵器」による襲撃訓練など、想像を絶する日々だった。
「私たちには自覚的な立場というものが初めからなかった。日本の国家情勢などというものは<所与の現実>であり、いかに対処するかなどということは、意識にのぼりませんでした。時勢に押し流されて生きていたのです」
なぜ我々は、あのような大戦争に向かっていったのか――
平和記者が描く、満洲事変、日中戦争、太平洋戦争にいたる「十五年戦争」期の若者たち。
目次
第一章 徴兵猶予の停止と学徒出陣
第二章 日米英開戦と入隊までの大学生
第三章 大連で育った小・中学時代
第四章 二等水兵からの軍隊生活
第五章 「特殊兵器」の搭乗員に
第六章 「回天」「震洋」「伏龍」の襲撃訓練
第七章 若き君たちへの伝言
著者について
広岩 近広
ひろいわ ちかひろ/1950年大分県生まれ。電気通信大学電波通信学科卒業後、毎日新聞社に入社。社会部やサンデー毎日で主に事件を取材、平和担当の専門編集委員をへて現在、客員編集委員。
岩井 忠正
いわい ただまさ/1920年熊本市生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科から学徒出陣、海軍特攻隊で終戦を迎える。商社員をへて、翻訳業。
岩井 忠熊
いわい ただくま/1922年熊本市生まれ。京都大学文学部史学科から学徒出陣、海軍特攻隊をへて、終戦後に復学。立命館大学教授、副学長を歴任し現在、名誉教授。