活性期に入った日本列島の地震活動。
近代以降の三つの大震災――関東、阪神・淡路、東日本を中心に、2016年の熊本地震まで、日本社会の地震に対する歴史性とその問題点を明らかにし、来るべき大災害への対策を提案する。
「日本列島の地震活動は、1995年の阪神・淡路大震災をもって平穏期から活性期に転じた。16年を経て、2011年に勃発した東日本大震災は超弩級の複合災害であった。問題の重大さはそれを地震活動のフィナーレと見ることができない点にある。
歴史的な地震活性期から類推すれば、2016年の熊本地震に続いて、西日本や列島中央部にかなりの地震が起こり、そして南海トラフの地震津波が起こるのを待たねばならないのではないか。そのような時代を、我々は生きているのではないだろうか。そう考えて備えることが、現代の課題であろう。
未来については、過去ほどにでデータは存在しない。しかし過去を分析することは、未来へのよりよき想定の土台となる。『大震災の時代』を生きるわれわれ共同の運命を訪ね、その中でこの列島の住人が悲惨を超えてよりよく生きる道を問いたいと思う」
――本書より
<目次>
●はじめに
「三大震災」の視座から
日本人の自然観・天災観
●第一章 関東大震災
地震発生のメカニズム
被災地の惨状
江戸時代・明暦の大火
震災への行政対応
自警団による虐殺
政争の中の創造的復興
●第二章 阪神・淡路大震災
戦後平和を引き裂く直下地震
安全のための第一線部隊
自衛隊出動
生存救出と「震災の帯」
首長たちの初動
官邸の初動
復旧・復興の諸局面
創造的復興の行方
●第三章 東日本大震災
巨大津波を生んだ海溝型大地震
津波常襲地の三陸海岸
消防団の苦闘
警察の災害対応力
自衛隊の任務
現場主義の奮闘
自治体間の広域支援
日本政府の初動
フクシマの現場
復興構想会議
安全なまちづくりを目指して
●終章 地震活性期を生きる
リスボン地震との比較
災害対策の現在
熊本地震
●おわりに
著者について
いおきべ まこと/1943年、兵庫県生まれ。1969年、京都大学大学院修士課程修了。広島大学政経学部助手、講師、助教授、神戸大学大学院法学研究科教授、防衛大学校長を経て、現職。その間、ハーバード大学、ロンドン大学の客員研究員。また、東日本大震災では政府の復興構想会議議長を務めた。現在、熊本県立大学理事長、ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長、神戸大学名誉教授、くまもと復旧・復興有識者会議座長。『米国の日本占領政策』(中央公論社)ほか著書多数。日本政治外交史専攻。