生成AIが多様性を殺す――科学の暴走が招く危機に迫る!
「デジタル文明を推進している超人間主義者たちは、人間を超えた知性の出現を待望しているようだ。機械に宿る超知性こそ、「AGI(汎用人工知能)」なのかもしれない。だが、それは彼らが、「知」というものの本質を取り違えているからではないのか。知とは本来、生物が地上の苦悩のなかで生き続けるためのノウハウであり、デジタル技術など、進化史における膨大な知的蓄積のごく一部の表層にすぎないのだ」(本文より)
チャットGPT、シンギュラリティー、量子コンピューター、DX......日本を代表する情報学者が、デジタル社会の行方を語り尽くす。研究活動50年間の集大成!
目次
はじめに
Ⅰ 科学技術と人間――知の土台に向かって
[1] AIの論理をえぐる
情報とは何か
宇宙開発と「生命誕生の謎」
立花隆『宇宙からの帰還』を読む
三島由紀夫と国語改革
量子コンピューターの可能性
「観察者効果」の意外な意味
AI俳句をめぐって
バイオエピステモロジーの問い
機械翻訳と外国語学習
脳科学へのAIの活用
AIの弱点、克服するために
[2]人間はデータではない
日本学術会議問題の背景
「ソサエティー5・0」の落とし穴
銀行システム障害の深層
天才フォン・ノイマンの悪魔的価値観
「GIGAスクール」教育への懸念
デジタル庁への疑問
米中宇宙開発競争の意味
脱炭素エネルギーへの対応
日本の「デジタル敗戦」を考える
DXとアメリカニズム
サイバー戦争と安全保障
Ⅱ 読書日記――さまざまな言葉の響きから
[1] 人間のモノ化に抗う
根が深い「反動」的世相――『そろそろ、人工知能の真実を話そう』『難破する精神』
文理の溝またぐ「新実在論」――『有限性の後で』『なぜ世界は存在しないのか』
知識があふれる現代の病弊――『知ってるつもり』
生産中心主義への批判――『呪われた部分』『第四の革命』
生命現象めぐる大胆な仮説――『バイオエピステモロジー』『ニュートン主義の罠』
文化的存在としての科学――『日本近代科学史』
道徳なく利追う社会に懸念――『サンデル教授、中国哲学に出会う』
人間を「モノ」と見なすのか――『サイボーグ化する動物たち』
今、死の重みを正面から――『魂と無常』
人間の尊厳につながる自由――『新実存主義』『「私」は脳ではない』
[2] 科学の限界を知る
翻訳は共感的な行為である――『考えるための日本語入門』
AI万能論、罠に敏感に――『入門・世界システム分析』『ヨーロッパ的普遍主義』
滅亡へ突進する人間の愚かさ――『山椒魚戦争』
人間を機械として使う不安――『ロボット』『人間機械論』
科学と利益追求、強まる癒着――『二十世紀を騒がせた本』『沈黙の春』
自由意志、「外部」感じ可能に――『天然知能』
科学への信頼、根幹に目を――『科学哲学講義』『科学の限界』
文理融合、若手が問う自律性――『AI時代の「自律性」』
未知の病原体、SFと現代――『アンドロメダ病原体』
「新たな従属」に抗する道標――『ホモ・デジタリスの時代』
持続可能な日本、地方分散で――『人口減少社会のデザイン』
[3]共生の道を探る
中世ユダヤ人の冒険物語――『昼も夜も彷徨え』
大国に踏みにじられた悲劇――『また、桜の国で』
誇り高き鳥の悲しい運命――『ニワトリ』
鮮やかな色合い、巧みな構成――『青いバラ』
人間の行動まで変える――『心を操る寄生生物』
「独裁」復活の兆しの正体は――『ガルシア=マルケス「東欧」を行く』『族長の秋』
AIに屈服、近未来の暗い隠喩――『2038 滅びにいたる門』
凶暴な仕打ちやめ共生を――『魚たちの愛すべき知的生活』
第三の言葉、創造の努力重ね――『アリョーシャ年代記 1~3』
若き精神科医、遺した質問状――『心の傷を癒すということ』『精神科医・安克昌さんが遺したもの』
Ⅲ 生成AIは汎用知になるか――情報・自然・無常
チャットGPTの衝撃
西洋の自然観と科学技術
AGIのめざすもの
自然のコンピュータ・シミュレーション
身体行為がつくる心と世界
東洋の「空観」
「おのずから」と「みずから」
鉄腕アトムとAI俳句
情報と自然をとらえ直す