<2大知性>が語りつくした日本の未来像
話題のロングセラー待望の文庫化
自然とともにあったはずの日本人の感性は失われ、私たちの身の回りから、虫や動物たちが消えていく。身体に刻まれた原初の記憶を、いま思い出す時がやってきた。解剖学者と霊長類学者が<虫とゴリラ>の目で、人間の世界をとらえ直し、自然との新たな共存の道をさぐる。
「世界を支配する力を得た人類は、生きものを失った思考の中で、実際に生きものを滅ぼしてきた。これからの存続が危ういのは、虫とゴリラだけではない。ヒトをそこを加えるべきなのである。それを防ぐには、皆さんの考え方を根本から見直してもらわねばならない」(まえがき)
<目次>
文庫版まえがき 養老孟司
プロローグ 共鳴する世界
第一章 私たちが失ったもの
身近な異変/虫の列島史/サルの列島史/列島構造線
房総半島の謎/列島改造時代/拡大する人間圏
第二章 コミュニケーション
自然との会話/脳と毛/触覚ぎらい/つながる感覚
第三章 情報化の起源
ビッグデータ/草原へ旅立つ/言葉の誕生
交換するということ/意味と創造/蓄積する文化
第四章 森の教室
二つの教育/好き嫌い/教育の成果/危ない世界
手間がかかるヒト/自然の捉え方/道徳と教育/論理vs.感覚
第五章 生き物のかたち
想像する生物/形の意味/オスとメス
外に出る脳/抽象化と脳容量
第六章 日本人の情緒
新興住宅/京都の結界/建築の未来/闇と縁側
縁側の思想/本人というノイズ/現物は違う
変わるもの/変わらないもの/日本文化を考える
第七章 微小な世界
ヒゲの振動/雪国/海の国
限界を超える/しらけ世代
第八章 価値観を変える
ゴリラの墓/痩せた人/人間の改造
エピローグ 日本の未来像
あとがき―虫とゴリラの旅 山極寿一