激動の中国大陸。
捨て子・佟雨龍の数奇な運命が拓かれるーー。
一度死んだ佟雨龍がふたたびこの現世へ舞い戻ってきたのは、甲辰の年(一九六四年)の十月十八日のことであった――。
舞台は、毛沢東率いる中国共産党が全権を握る中国山東省の吹牛村。捨て子の佟雨龍は、養父の佟継漢と養母の李秀媚の庇護のもと、姉の李平や犬の皮蛋(ピータン)とともに平和な少年時代を送る。そんなある日、共産党の青年幹部・田冲が村に赴任し、一家の暮らしにささやかな変化が訪れる。じつは、田冲は、養父の佟継漢と浅からぬ因縁があり、復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。
目次
第一部
1 佟家クロニクル
2 拳銃と皮蛋
3 生き埋めの王
4 怒りに体をあたえるな
5 革命的生産をめぐるあれやこれや
6 魂の成り立ち
7 せいぜい命ひとつの反右派闘争
8 皮蛋を食って飢饉を生きのびる
9 雨に殺され、雷に救われた少年
10 佟雨龍の誇り高くも哀れな死