サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2018年11月 4日号
宇崎竜童 音楽家
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阿木燿子の艶もたけなわ/225

今回のゲストは、阿木さんの公私共にパートナーの宇崎竜童さんです。お二人が長年手塩にかけて育ててきた舞台「Ay(アイ)曽根崎心中」は、フラメンコで近松門左衛門の曽根崎心中を表現するというもの。それが今年12月、新国立劇場で開催。これまでの軌跡を振り返って頂くとともに、今回の公演に対する思いなどを語って頂きました。

◇デビュー45周年記念として「Ay曽根崎心中」をやる。僕なりの決意表明。

◇私が他の作曲家と組んで、仕上がりが良い詞を書いた時は、ちょっとイラッとしている。

◇そりゃ、そうだよ。「何だ、このメロディー」って思うものにもちゃんとした詞を乗せてる。

阿木 この対談をやらせて頂いて5年ちょっと経(た)つんだけど、再度の登場はあなたが初めてなの。

宇崎 それは光栄なことだけど、実は僕、デビュー45周年なの。

阿木 何?唐突に。同じこと、去年も言ってなかった?

宇崎 本当は今年なんだ。

阿木 あのー、そういうことで、貴重な紙面を埋めたくないんですけど(笑)。

宇崎 じゃ、もう1回、初めから対談をやり直しますか?

阿木 それは結構(笑)。で、結局、何が言いたかったの?

宇崎 僕の中で45周年記念として「Ay曽根崎心中」をやろうということだよ。今、僕の持てるエネルギーをすべて結集して。その僕なりの決意表明なわけ。

阿木 「Ay曽根崎心中」は長年、私達が手掛けてきた「フラメンコ曽根崎心中」を改題し、再出発を図った作品で、近松門左衛門の戯曲をフラメンコで表現する舞台。この作品のプロデューサーは私、でも関わりとしては、あなたの方が古いのよね。

宇崎 そう、何しろ「曽根崎心中」は僕の映画初出演作品であり、初主演だからね。

阿木 映画自体はとても評価が高くて、名だたる映画賞で作品賞や主演女優賞を取ったのに、あなたに対する評価は......。

宇崎 そう、もう散々。ある映画評論家は、「何だ、あの目鼻が飛び散ったロマンの無い顔は」って(笑)。

阿木 それ、傷つく(笑)。なのであなたはそのリベンジを含めて、文楽の方と「ロック曽根崎心中」を作った。踊るのはお人形さん。バックの演奏はダウン・タウン・ブギウギ・バンド。それが今のフラメンコ版の基になっている。

宇崎 本当、人生「人間万事塞翁(さいおう)が馬」だよね。何が幸いするか分からない。

阿木 初演から18年。こうして再演を重ね、今や私達のライフワークになってる。ほとんど子育てに近い。ううん、私達がこの作品で育てられてる。

宇崎 まったく同感。こんなに一つの作品にかかずらっていいのかというくらい手が掛かっているけど、それがすべて僕達の人生にフィードバックされてるよね。まず僕は人に感謝することを覚えた。

阿木 本当ね。この作品が再演を重ねられること自体ありがたいし、スタッフ、キャストはもちろん、観てくださるお客様すべてに感謝しかない。でも、つくづく思うけど、自分達の若い頃を振り返ると、本当、恥ずかしいことばかりで。

宇崎 僕なんか「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」がヒットした直後、僕らを追っかけてくれてたカメラマンに向かって、「俺達、ビートルズを超えたら、どうしようか」なんて(笑)。

阿木 そう結構、本気で言ってた(笑)。

宇崎 若気の至りとはいえ、恥ずかしいよね。でも、あなただって相当なものだよ。大物歌手に、偉そうな口をきいてたもの。

阿木 ま、二人とも若かったということで(笑)。でも、お互いにこんなに長く、この仕事を続けてこられるとは考えてもみなかったわね。

宇崎 本当だよね。まず僕は自分が歌手になれるとは思ってなかった。声にもルックスにも自信がなかったしね。

阿木 それで、よく音楽出版社からの「レコード出しませんか」の誘いに乗ったわね。

宇崎 僕だって考えたよ。あの時、あなたに相談してないんだよね。

阿木 そう、そうだった。大抵のことは相談し合うのにね。反対されると思ったの?

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