坂本九の「上を向いて歩こう」が、日本ポップスで初めて全米ヒットチャートの１位に輝いたのは１９６３年。今やオジサン、オバサンの知らないうちに日本の若いアーティストは軽々と国境を超えてワールドワイドに活躍する。
なかでもユニークなのが４人組ガールズバンドのＣＨＡＩ（チャイ）で、海外にも多くのファンを抱える彼女たちは、これまでアジア、アメリカ、欧州など海外ツアーをこなし、今年は２月から約２年ぶりの北米ツアーを敢行した。ツアー中は全てバンで移動するが、バンが牽引（けんいん）する衣装などを積んだトレーラーが、途中でトレーラーごと盗まれるハプニングに遭ったがツアーを続行、成功させた。
９月から再び北米を回り、その後は初の中南米でのライブに挑む。北米では５カ所の単独ライブや音楽フェスに参加し、米国のバンドのツアーにも同行。中南米ではブラジル、チリ、アルゼンチン、メキシコのフェスに出演する。
近年、日本のアーティストが海外で注目されるきっかけとなる要素にはアニメ、アイドル、ビジュアル系の三つのどれかがたいてい関わっている。これらと一線を画すＣＨＡＩは２０１７年に海外公演に乗り出した。マナ、カナの双子（ギターとボーカル）とユウキ（ベース）、ユナ（ドラム）が「ＮＥＯかわいい」をキーワードに、「コンプレックスはアートだ」といったライトな自己肯定感をベースにしたサウンドと詞は「固定観念をぶっ壊してくれるし、かわいい」と内外で共感を得て、『ニューヨーク・タイムズ』紙や英ＢＢＣ放送など海外主要メディアでも取り上げられた。
小気味いいビートにのった日本語と英語をまじえた歌詞はポジティブ。出身は３人が名古屋で１人が岐阜。「最高で圧倒的な個性だで、時代がＣＨＡＩに追いついてきたもんでだ」と自己分析。「女が憧れる女を、こんな女がいるんだぞっていう証明を音楽を通して見せつけえくるに」と、ツアーへの意気込みを語る。
（川井龍介）
