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2021年5月 2日号
スポーツ 池江璃花子4冠も記録は途上 「東京」での過剰な期待は禁物
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 奇跡の復活劇は日本中を感動させた。2019年2月に急性リンパ性白血病を公表、闘病を続けていた日本競泳女子のエース池江璃花子(20)=ルネサンス=が、東京五輪代表選考会を兼ねた競泳日本選手権(4月3〜10日、東京アクアティクスセンター)で出場した100㍍自由形、同バタフライ、50㍍自由形、同バタフライの4種目全てで優勝する4冠を達成した。種目別の個人五輪派遣標準記録には届かなかったが、400㍍リレーと400㍍メドレーリレーの派遣標準記録をクリアし、リレー枠での東京五輪代表が内定した。

 白血病治療からのリハビリを経て、19年12月に退院。1年7カ月ぶりに実戦に復帰したのは昨年8月だった。リハビリ中は「24年パリ五輪でのメダル」が目標だったが、今回の復活で一気に東京五輪の主役に躍り出た。ネガティブな話題が続いている中での貴重な明るい話題に、マスメディアが飛びつくのも当然だ。8日間で11レースをこなし、着実に記録を伸ばしている池江自身も「自分の持つ日本記録に近づいている手応えも得られた」と、東京五輪に意欲を見せている。

 日本代表の平井伯昌(のりまさ)ヘッドコーチも「短期間でこれだけ戻すことができるということは、五輪までも期待できるということ」と話す。周囲の期待は高まるばかりだ。

 しかし、「頑張り屋」の池江の体調を最優先してほしい。抗がん剤治療などで体重も筋力も大きく落ち、日常生活も危ぶまれた身である。期待が本人へのプレッシャーにつながることが一番気になる。東京五輪開幕まで100日を切っており、4冠といっても世界との差はまだ大きい。

 今大会の最初の種目だった100㍍バタフライの優勝タイムは57秒77だが、池江自身が18年8月にマークした日本記録は56秒08。世界記録も55秒48と遠いままだ。他種目も同じように記録には復活途上だ。やはり長い目で見守ってほしい。

(水木圭)

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