東京五輪は日本選手の金メダルラッシュに沸く一方、ネット上では〝いら立ち〟が目立つ。韓国メディアの日本に対する五輪報道にイライラする人も少なくないだろう。
開幕前は「放射能に汚染された福島産食材が心配だ」と、韓国が別途に専用の食堂を設置したと報道。選手村の部屋のベランダから日本を揶揄(やゆ)する垂れ幕を掲げ、これは日本からの批判で撤去された。
7月23日の開会式では君が代に反発し、「開会式は2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪のパクリ」と言い放つ。果てには、表彰式で選手に贈られるビクトリーブーケに福島産の花があるのはけしからん......。
一方、冬季とはいえ直近の五輪だった平昌当時、韓国メディアは「反日」よりも伝えるべきことが多かった。スピードスケート女子短距離の小平奈緒選手と李相花(イ・サンファ)選手の友情を体現した交流は感動を呼んだ。カーリング女子・日本の「もぐもぐタイム」や「そだねー」は、韓国内でも大きな話題になった。
また、対外強硬姿勢を続けていた北朝鮮が参加。北朝鮮の楽団が現地やソウルで公演したり、「美女軍団」と呼ばれる応援団に関心が集中した。あとは「とにかく寒かった」と、当時現地で取材した記者たちは口をそろえる。
「反日報道は韓国にとって清涼剤」と言われることがある。ネタがないからといって、一瞬の気持ちよさで国民感情を悪く刺激するのもどうか。
一方、開会式中継を担当した大手テレビ局MBCが入場行進で、チェルノブイリの写真を示してウクライナを紹介し、ハイチの紹介では「大統領の暗殺で政局は霧の中」とテロップで表示。後に社長が謝罪に追い込まれたが、韓国メディアの〝国際感覚〟の一端を示す出来事でもあった。
ただ、日本も開会式の演出や楽曲の担当者が相次いで職を去り、人権意識などが問われた。五輪は関わる国々のさまざまなものを映し出す〝鏡〟でもある。
(浅川新介)