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2021年7月11日号
北朝鮮 金正恩氏の「スリム」な体形は 三重苦あえぐ国民への「範」か
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 朝鮮労働党が統治する北朝鮮。6月中旬に同党の最高機関・中央委員会の総会が行われた。注目すべきは二つ。対外関係と経済状況だ。

 前者は最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が「(米国との)対話と対決、双方に備える」と言及したため、これまでの対決姿勢が変わるかと関心が集まった。しかし、それ以上の言及もなく、今年1月の党大会では「強対強、善対善の原則で米国と対応していく」と述べたが、その表現が変わっただけのようだ。

 それ以上に自国の経済問題が深刻だ。総会を開いたのも「国家の主要政策の執行状況の中間総括」(朝鮮中央通信)と位置づけたが、その中間総括も厳しいものになったようだ。金総書記は「今年上半期の工業生産額計画を144%、昨年同期比で125%達成」と成果を口にした。しかし、これから推算すれば、今年の計画は、昨年の85%前後のレベルにまで下げていたことが分かる。

 また「人民の食糧状況が厳しい」と、金総書記は素直に認めた。北朝鮮は従来の経済制裁に加え、コロナ禍で国境を閉じて対外経済活動がゼロに近い。さらに昨夏に相次いだ台風による水害からの復旧作業も十分ではない。経済面では三重苦の状態だ。

 北朝鮮メディアは最近、田植えなどの農作業が例年通り行われている様子や、工場生産が順調なことを例年よりも多く報道し続けている。総会での報告でも「百折不屈、自力更生、刻苦奮闘」という精神的な努力を促す言葉が頻繁に登場した。だから、か。「具体的な経済計画を立てられず、ましてや政策も立案できないから精神論に走ったか」(中国の北朝鮮関係者)という声が広まりつつある。

 総会と前後して、金総書記のスリムになった体形が話題になった。経済が回らず、食糧も足りず、自らやせることで範を示したのか――。あながち冗談でもなさそうだ。

(浅川新介)

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