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2021年8月15日号
社会 府施設の判断を裁判所が覆し大阪で「表現の不自由展」開催
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 公共施設などで展示を断られたり撤去されたりした美術作品を集めた「表現の不自由展かんさい 消されたものたち」が7月16〜18日、大阪府立労働センター「エル・おおさか」(大阪市)で開かれた。

 会場向かいの歩道では、展示中止を求める団体のメンバーらが声を張り上げ、関西各地の街宣車が押し寄せた。一方、同展を応援する人たちは、開催を支持するプラカードを掲げた。数十人の警察官が車止めを設置して警備にあたり、会場側も金属探知機を用意して手荷物検査を行った。脅迫状や不審物も届いたが、「局留め」にして厳重に調べる態勢をとり、弁護士も常駐した。

 会場には、一昨年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展で展示された従軍慰安婦を象徴する「平和の少女像」や、福島第1原発事故後の被災地をとらえた写真作品などが展示された。孫と訪れた高齢の女性が「何も持ってきてへんから、アメちゃんあげる」と少女像にアメを供える場面もあった。女性は「元気なうちに会えて良かったです」と感慨深げ。

 主催したのは、市民有志で作る実行委員会。同様の美術展は今夏、東京、名古屋でも企画されたが、東京は抗議の街宣車が押しかけたギャラリーが相次ぎ辞退して延期。名古屋は会場宛ての郵送物が破裂して中断しただけに、大阪の行方が注目されていた。

 会場の府立施設側は6月25日、相次ぐ抗議を理由に利用承認を取り消した。吉村洋文知事は施設内に保育所などがあることから「施設を安全に運営する観点から、取り消しを求めるのは当然」と主張した。だが、大阪地裁と大阪高裁が開幕直前に会場の利用を認め、開催に漕(こ)ぎ着けた。

 3日間で1300枚用意した整理券は「完売」。最終日は午前8時過ぎに配り終わってしまい、入場できなかった京都府の女性は「こういう展示がいろんな所で普通にできないといけないのに」と嘆いていた。

(井澤宏明)

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