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2020年12月20日号
私学も後追いする新勢力 公立中高一貫校の「大学受験力」
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今、公立の中高一貫校が全国的に注目されている。中学と高校で教育の分断、またカリキュラムの重複を防ぐためで、文部科学省が主導して1999年に制度化された。東京の都立校がいち早く成果を上げたが、各地でも続々と増えてきた。その現状を報告する。

まず、公立の中高一貫校には3種類がある。高校に付属中が伴う併設型▽市町村の中学と都道府県の高校が教師や生徒の交流などを図る連携型▽門戸が中学のみとなる完全中高一貫型の中等教育学校――だ。連携型は過疎地域で多く見られる。本稿では併設型と中等教育学校を取り上げる。

併設型は高校でも生徒の募集をするため、中学の門戸は限られている。中学の選抜試験は「適性検査」と呼び、これをパスして入学する生徒が3分の1から半数を占める。高校には無条件で進学可能だが、内部進学生と外部入学者には学力格差が生じやすい。

中等教育学校は6年間を便宜的に、一般の中学に当たる前期課程、高校に当たる後期課程に2分割する。基本的に生徒は同じ進度で学習する。6カ年の教育効果はおおむね高い。

現在、公立一貫校が設置されているのは45都道府県。2016年度で併設型は31校、中等教育学校は87校で計118校を数える。

日本初の公立一貫校は1994年創立の宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校だ。自然豊かな一帯を活性化する中核に位置づけられた全寮制の学校。国の制度に先立つものだった。全国的な話題となったのは、都立白鷗高が付属中を設けた2005年だ。当時の石原慎太郎知事による教育改革の目玉だった。

私はこの3年間、首都圏の公立一貫校のほとんどを取材してきた。私立と違って明確な広報担当がおらず、交渉の難しさを感じもした。だが、意欲的な校長や幹部教諭に率いられた学校は、生徒が生き生きと学習に臨んでいた。

公立一貫校の年間学費は私立の3分の1程度だ。都内の私立中における初年度納付金は平均約95万円。年額で平均約15万円とされる私立特有の寄付金や学債はここに含まれない。一方、都立中(一貫校)は授業料や入学金は不要。中学までは義務教育だからだ。学費は学校徴収金と学校指定用品の合計となる。都立でも比較的高額な両国高・中も、初年度納付金は総額45万円ほどだ。

学習面はどうだろうか。従来の一貫校は国・私立とも「先取り学習」が当たり前だった。中学段階から高校の内容に入り、早めに高3までのカリキュラムを終え、残された時間を大学受験対策に充てるのだ。私立は準トップや中堅進学校でも完全一貫化する学校が増えた。これを公立校も追随した形だが、教育ジャーナリストの小林哲夫氏は語る。

「公立一貫校は『公立復権の鍵を握る』と言われてきた。新興や中堅の私立校を凌駕(りょうが)するだろうと私自身、予測していた。およそ、その通りになりましたね」

まずは倍率の高さだ。20年入試の都立一貫校の定員は総計約1400人、平均倍率は5・47倍だった。都内で「男子御三家」と呼ばれる麻布、開成、武蔵などでさえ約3倍以下だ。これでも一時期より倍率は落ち着いてきた。発足直後は〝お試し受検〟も多く、9倍に達した時期もあった。人気の高さが分かる。

そして、時代を先取りしたとも言える適性検査だ。

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