サンデー毎日

社会
イチオシ
2020年11月 8日号
特集・教育クライシス コロナでも生き残る大学5選 慶應SFC 東京外大 ICU 桜美林 帝京
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コロナ禍で教育が揺れている。大学での〝学び〟も同様だ。国内屈指の中学受験のエキスパートが、独自の情報網と視点から危機の実像を探る。見えたのは中高一貫校の懸命な挑戦と、その生徒の目標となるはずの大学間での格差だ。再び大学は〝死〟を迎えるのか。

▼日本にいながらロシアにZoom留学

▼対話を重視してキャンパスを開放

▼〝老害〟教授が大学を殺す

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年3月から日本中の学校で休校措置が取られた。4月になっても感染は収束せず、休校措置は継続した。

私は中学受験、特に私立中高一貫校(私立一貫校)を専門とする立場なので4月以降、その取り組みを詳しく追ってきたが、実に目を見張るものがあった。生徒たちの安全のため、もちろん休校措置を取るが、同時に生徒たちの学びは止めたくはない。そのため、私立一貫校の先生方はICT(情報通信技術)を駆使して学びを継続した。

具体的には、短期間でウェブ上に先生、生徒共有のプラットフォームを整備し、課題のやりとり、動画配信、オンライン授業などを実施・拡充した。私立一貫校では一挙にICT教育が5年進んだ感があった。目覚ましい動きを可能にしたのは、預かった生徒のため、ともかく前に進んだ先生方の熱意と、動くための予算を柔軟に運用できたことの2点に尽きる。

公立にも熱意ある先生方は多くいる。だが、私学のように独自予算ですぐ動くことは原則無理なので、自由に動けなかったのだ。

そして、緊急事態宣言が解除後の6月、多くの私立一貫校は感染防止に最大限に配慮しつつ、学校を再開した。ICT活用も継続するが、それだけでは教育に限界があったからだ。

具体的には実技教科、実験・実習、クラブや行事など。体育や美術、実験などは手を動かし、体を動かして作業することで「心が動き」、理解が深まる。クラブや行事は仲間と共にいて、共に感じ、共に作業し、対話することで生徒たちは共感性や協働を学び、成長するのだ。

もちろん、感染は防がねばならない。そのため、常に知恵をふり絞って答えを探しつつ、私立一貫校の先生方は動いた。未知のウイルスのため、誰しもが「正解」を持たない。ゆえに常に最適解を考えつつ、必死で前進したことが、生徒や保護者の厚い信頼を私学は得ることとなった。そのため、公開模試の数字などからも、来年の首都圏の中学受験生は増えそうだ。

大学はどうか。4月段階では、小中高と同様に休校措置を取り、ICT活用を試みたところまでは同じだった。ただし、ICT対応は各大学で相当の格差が生じた。前述の私立一貫校でも差はあったが、大学ほどではなかった。格差は技術的な点と内容的な点の双方で顕在化したが、いずれでも優位性を発揮し、学生の満足度が高かったのは国際教養系の大学だった。

その要因は二つ。まずコロナ流行前から、ICT化を進めていたので、アドバンテージがあったことだ。そもそも海外の大学などと「Zoom」などのビデオ会議システムを使用していたため、優位性があった。そして、チュートリアル(対話型)を重視し、学生と心的な距離が近く、なおかつ比較的小規模だったため、一貫校のように生徒に寄り添った対応ができた。

例えば、東京外国語大の大学1年生に聞いたところ、1学期から「Zoom留学」をしていたそうだ。彼女はロシアとつないで、毎日「留学している」とうれしそうに話していた。これも東京外国語大が海外とつながるため、ICTにも長(た)けていたからで、コロナ禍にも関係なく対応できたのだ。

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