編集長後記
戦争と聞いて思い出したのは、作家と1枚の写真だ。小田実氏の兵庫県西宮市の自宅には、1945年6月15日、米軍のB29爆撃機から、大阪の街を撮った写真が飾られていた。地上の惨状を隠すように、何本もの煙が覆っていた。小田氏は13歳のころ、大阪空襲を経験していた。
著書にある。〈自分の眼でおびただしく見た死は(略)ただもう死にたくない、死にたくないと逃げ回っているうちに黒焦げになってしまった......〉。ベ平連など反戦活動に尽力したのは、戦争に苦しむ人への共感であろう。
ロシアに侵攻されたウクライナの地で、同じ悲劇が起きている。煙の下にいる人たちを思いたい。
(坂巻士朗)