対談詳細

艶もたけなわ
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阿武野勝彦 東海テレビ放送プロデューサー

2019年9月15日号

 阿木燿子の艶もたけなわ/267

 一般に堅く、真面目な印象を抱かれがちなドキュメンタリー映画。そんな中、話題作を連発するのが、名古屋に拠点を構える東海テレビです。建築家夫婦の暮らしを追った「人生フルーツ」(2017年劇場公開)は26万人を超える動員を記録、現在も全国で再上映が続いています。プロデューサーの阿武野勝彦さんに製作の姿勢を伺いました。

◇「無駄をやり尽くそうよ」というスタンスで番組づくりをしています。

◇阿武野さんなら、引く手あまたというか、ご自身で独立も考えられるのでは?

◇独立だなんて......。ドキュメンタリーで食べていくのは難しいと思います。

阿木 いきなりこんなことを申し上げて何ですが、阿武野さんは東海テレビの報道局のプロデューサーでいらっしゃる。今年ちょうど60で定年の年ですよね。

阿武野 38年勤めまして、1月に無事定年になりました。今は、1年ごとの契約で仕事を続けています。

阿木 プロデューサーとして手掛けられたドキュメンタリー作品がギャラクシー賞をはじめ、あまたの賞を受賞していらっしゃる阿武野さんなら、引く手あまたというか、ご自身で独立ということも考えられるのでは?

阿武野 いえいえ、独立だなんて......。ドキュメンタリーで食べていくのは難しいと思います。もしフリーになったら、本意じゃないものをたくさん受けなきゃならないでしょうし、それよりも、慣れ親しんだ場所で自由にやらせてもらったほうがいいと思いまして。

阿木 私、阿武野さんがお作りになったドキュメンタリー番組を2本、拝見しましたが、組織にいてよくぞ、こんなに自由に作品作りができたなと感心しました。他のテレビ局のドキュメンタリーの担当者が見たら、羨ましがるんじゃないでしょうか?

阿武野 そうかもしれません。テレビ界には、ドキュメンタリーは金食い虫という定説がありますが、更に手間を掛けてますからね。

阿木 いいものを作ろうとしたら、お金がかかる?

阿武野 そうですね。ドキュメンタリーは、お金と時間がかかるばかりじゃなくて、放送後に思わぬところからクレームが来たり、問題が起きたりします。また、合理的に製作しようとすると、取材にそう何回も出られない。効率主義と危機回避の中で、作り手の悩みは深いと思います。でも、そればかりだと、ドキュメンタリーという表現がやせ細る一方なので、僕達は逆に「思い切って無駄をやり尽くそうよ」というスタンスで番組づくりをしています。

阿木 時間を惜しまず、手間ひまかけてってことですよね。

阿武野 そうですね。ものによっては2年かける番組もありますし、先輩から引き継いだテーマを30年、40年とバトンをつないで製作し続けることもあります。

阿木 この世知辛いご時世に、何とも贅沢(ぜいたく)なお仕事ぶりですね。私が観せて頂いた作品の1本は「人生フルーツ」。これは取材に2年間かけられたとか? まさにタイトル通り桃栗三年、柿八年の世界(笑)。

阿武野 2年では、桃や栗だと、まだ実がなりませんね(笑)。

阿木 そんなふうにじっくり作る時間をもらえるって、ありがたいですよね。東海テレビさんはクリエーティブに理解がありますね。

阿武野 はい、「ドキュメンタリーの東海テレビ」を盛り上げようという熱い気持ちで支えてくれる仲間がたくさんいます。

阿木 阿武野さんはドキュメンタリー一筋で来られたのかと思いきや、一時、社内を漂流なさり、営業にいらしたこともおありだとか? ただ、そこでも好成績を残されたんですよね。

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