対談詳細

艶もたけなわ
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コシノジュンコ デザイナー

2018年6月17日号

阿木燿子の艶もたけなわ/206 

ファッション界という枠にとどまらず、イベント空間や花火など、ありとあらゆるものを"デザイン"するコシノジュンコさん。以前、朝ドラ「カーネーション」でも注目されたコシノさんのルーツは、大阪・岸和田。だんじり祭の情熱が、コシノさんの心に燃え盛っています。今なお第一線を駆け続けるコシノさんの魅力満載でお届けします。

 ◇3人姉妹の真ん中だから、子供の頃からライバルの中で育ったようなもの。  

 ◇大きくなるお腹をご覧になりながら、バルーンスタイルのドレスを思い付かれたとか?  

 ◇パリコレの真っ最中に妊娠して。とにかくお腹がスイカみたいになっちゃったんです。

阿木 えっ、これ、おしぼりですか? 食べるところでした。危ない(笑)。私、マシュマロかなって。

コシノ お水を掛けると、こんなふうに膨らむんですけど、アイディアですよね。日本って凝縮の世界ですからね。小さく作って、大きく見せるという。

阿木 合理的なんですよね。でも、何だか笑える。ニョキニョキするおしぼりなんて。手を拭く段階でもう和んでますよね。

コシノ 遊びの精神ですね。お客様に楽しんで頂くことが日本流のおもてなしの基本だと思うんです。

阿木 以前、『「縮み」志向の日本人』という本が、ベストセラーになったことがありますが。

コシノ 韓国の李御寧(イ・オリョン)さんが書かれた名著ですよね。私もあの本を読んでとても感動しました。日本人の特性を外から見て、大発見してくださった。

阿木 日本人には小さいものを愛(め)でる美意識があるって。一寸法師しかり、お雛(ひな)様しかり、盆栽しかりと。あの本を読んだ時、その通りだなと思いました。

コシノ 話は飛びますけど、大分以前、デンマークでEU・ジャパンフェスト(注1)が行われた時、全体のコーディネートをやらせて頂いたんです。ファッションショーの後のディナーで、竹をテーマに趣向を凝らし、6メートルの竹の弓を60本作り、それを飾ったり、竹の柄の半纏(はんてん)をボランティアの学生さん達に着てもらったりという、竹尽くしをやったんです。その時の日本側の代表が竹下登さん(笑)。

阿木 別に、そこに引っ掛けたわけではないんでしょう?(笑)。

コシノ まったくの偶然ですけどね(笑)。まぁ、みなさんには喜んで頂きましたけど、イベントの終了後、主催者サイドだけで、お食事をしましょうということになり、順番に座ったんです。で、目の前のお席の方と自己紹介をしたら、「李です」とおっしゃって。だから私「李さんというお名前で思い出しましたが、一人、韓国に尊敬している方が居るんです。李御寧さんとおっしゃる方で」って言ったら、「あ、それ、僕です」って。

阿木 よく、そんな偶然が!

コシノ ただ順番に座っただけですよ。私も本当にびっくりして。

阿木 コシノさんって、そういうことがよくお有りになるのでは?

コシノ そうですね。私、自分でこうしたいという考えはあまりないんです。ただ自分が憧れていたり、潜在的に思っていることに関しては、忘れた頃にチャンスが巡ってくることがよくありますね。

阿木 私も似たような経験を何度かして。欲しい欲しいと思っている時は手に入らなくて、もういい、と諦めかけた時に、神様からギフトみたいに与えられる。

コシノ 要するに、執着しないことですよね。そうすると向こうからやって来ます。だから待てば来るんですよ、とはよく言うんです。

阿木 詞でもこだわりを手放した時に、閃(ひらめ)くことってありますね。

コシノ まずはテーマ有りきですよね。先程の話に戻ると、日本を表現するのに何がいいかと思った時、竹だと思い付いて。竹なら筍(たけのこ)として食べ、日本家屋の建築材料としても欠かせない。そうやってテーマを絞り、そこから発想を広げてゆくんです。

阿木 それにしてもコシノさんの発想は、大胆かつユニーク。初めてパリコレをなさった時はおめでたでいらっしゃったんですよね。大きくなるご自分のお腹(なか)をご覧になりながら、バルーンスタイルのドレスを思い付かれたとか?

コシノ そうなんです。パリコレの真っ最中に妊娠して。とにかくお腹がスイカみたいになっちゃったんです。叩(たた)いてみたらポンポンって。あっ、スイカそっくりだわって。

阿木 その発想が面白いです。

コシノ だって、本当にスイカの音がしたんです。スイカってほとんどが水分ですよね。お水の中で胎児が生きているって、これは宇宙そのものだなと思ったんです。お魚も人間も一緒だなって。

阿木 スイカから宇宙までいっちゃうなんて、飛躍が凄(すご)い(笑)。

コシノ そうですか?

阿木 そうです(笑)。第一、そんな大きくなったお腹で、パリコレに挑戦すること自体が大胆。

コシノ 妊娠6カ月でパリコレ、8カ月で東京コレクション。ただ私自身はきれいな丸が自分のお腹に出現したことに感動して、あっ、宇宙って、こんな身近にあったんだなと。

阿木 そこでコシノさんの哲学とも言うべき、"対極"に目覚められたんですね?

コシノ 丸いものって神様が創った形だとしたら、四角は何だろうって考えたんですね。まず四角は方向ですよね。東西南北という。あとは合理的な人間の考えも四角、割り切れる数学の世界になってくる。そんなことで丸と四角の対極を考えるきっかけになりました。

阿木 普通、ファッションデザイナーって、お仕事の幅を広げても時計とか靴とか、せいぜい器ですよね。それがコシノさんの場合はスケールが大きい。

コシノ 最近のファッション以外のデザインでいうと、花火ですね。

阿木 あの、空に上がる?

コシノ そう、沖縄の名護市に喜瀬別邸(注2)というホテルがあって、前からそこへ行きたいなと思っていたんです。そうしたら約10年前、ある雑誌の編集長が、そのホテルを取材するから、一緒に行かないかと誘ってくれたんです。もちろん、すぐその話に乗ったんですけど、その日偶然、普天間で花火があったんです。その後、花火の関係者に「オペラをバックに打ち上げたら、もっと面白くなるんじゃないの?」と素人なりの意見を言ったんです。そうしたら「じゃ、デザインしてください」ってことになって。琉球海炎祭というイベントで、その話が実現したんです。

阿木 一瞬で消えてしまう花火のデザインって、どんなふうに?

コシノ 絵を描いたんです。普通、花火は丸いところからパーッと広がって出てきますよね。でも、それをやっちゃ、私がデザインする意味がないなと思って。

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